京都の観光問題を考える2 観光公害と京都ブランド 辻 俊明(環境対策担当理事)  PDF

C 一流の国際観光都市
安売り競争の対極にあるもの

 これからの京都の観光を考えるにあたり、おもてなしの精神だけで突き進むのには限界がある。入島税や宿泊税の整備が必要であろう。あるいは他国で頻繁に行われている観光客数制限も必要かもしれない。このような方法で環境を保全するのは他の観光地と同様である。
 しかしここからさらに一歩踏み出して観光地としての価値をより秀逸なものに仕上げるには、オリジナルな価値、すなわち他の都市にはない魅力、個性、京都でしか得られない体験をさまざまな状況の中に見出し、それを積極的に京都ブランドという付加価値にして観光産業に与えることが必要である。量から質への転換、あるいは薄利多売からの脱却である。観光客でごった返していない、というだけでも立派なブランドである。
 観光産業に限らず、わが国の社会全体で、今まで何に対しても付加価値を与える努力はほとんどなされてこなかった。今後、薄利多売の安売り競争と対極にあるこの抽象的、精神的なブランド価値を付与することなくして、京都が観光地として生き残ることは困難であろう。
 コロナ禍が一段落して京都においても観光公害が再び注目されるようになった。我々はこの問題をネガティブに受け取るのではなく、より良き未来へのチャンスと捉えるべきである。観光公害は観光について根本的に考え直す機会を与えてくれた。そして何が一番大切であるのかを真剣に考えることができた。このチャンスが活かされ、京都がより魅力を増し、今後も一流の国際観光都市として存在感を高めてゆくことを期待する。(完)

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