マイナ保険証の利用率は3月時点で5.47%と依然低迷しているが、武見敬三厚生労働相は国会で「利用率に関係なく12月2日に保険証廃止」と言明(4月17日、厚生労働委員会)した。厚生労働省は5月 7月を集中取組月間として「総力を挙げて取り組む」とする。
具体的には、医療機関における利用率アップ対策として、5月 7月のいずれかの月のマイナ保険証利用人数について23年10月の実績および利用人数からの増加量に応じて最大で診療所10万円、病院20万円を一時金として支給する。これは、窓口での共通ポスターの掲示と来院患者への声かけ利用を求めるチラシの配布徹底を支給条件とする。未稼働施設には療養担当規則違反となる可能性がある旨を通知、低利用率施設にも案内等を通知する。さらに、あらゆるメディアを動員した集中的な広報展開に取り組むという。
一方で、河野太郎デジタル相が自民党国会議員に対し、マイナ保険証の利用ができない医療機関を「通報」するよう議員の支援者に呼びかける要請文書を配布。この中で、利用率低迷の原因を「医療機関の受付での声かけにあると考えられる」と公言。岸田文雄首相はこれを4月24日の国会で問われ、「政府見解と合致し、不適切ではない」と追認した。
4月25日には、集中取組月間の露払いとして日本健康会議が「マイナ保険証利用促進宣言」を行った。同会議は、経済団体・保険者団体とともに日本医師会など医療関係団体も名を連ねる「民間主導の活動体」であるが、まさに官民一丸となった推進体制である。
優先すべきは安心して医療にかかれること
協会が昨年12月に行った会員医療機関調査では、国の総点検後も6割の医療機関でトラブルがあり、その対処法として87%が健康保険証で資格確認を行ったとある。いまだ紙の保険証なしでは安心して医療にかかれる環境にないことを示している。
国民の9割が利用していないのは、トラブルのリスクがあり、メリットを感じていないからである。このような不安払拭を二の次にして、医療機関に責任転嫁し、「通報」という手段で患者との分断をはかる手法こそ批判されるべきであろう。
145万筆の保険証を残せ署名 さらに
保団連などは4月25日、国会内で「保険証を残せ!署名提出集会」を開催。500人を超える参加で、立憲民主党、日本共産党の国会議員もあいさつし、署名41万9千筆(累計144万8千筆)を提出した。引き続き「保険証残せ」の署名に取り組む。
協会は5月14日に副理事長談話「医療機関への責任転嫁をやめ保険証の存続を」を公表(協会ホームページに掲載)。本紙に新署名用紙(要請項目は変更なし)を同封した。会員各位には引き続き協力をお願いしたい。