協会はコロナ禍で表面化した公衆衛生政策の課題を分析し、どのような事態でも医療が保障される政策の実現を目指す取組みを進めている。京都府は感染症予防計画を策定し、第8次医療計画等とともに4月から施行しているが、コロナ禍の医療アクセスをめぐる総括は不十分なままである。
施設等でのコロナ感染者の「留め置き死」問題は、@医療逼迫を起こした長年の「医療費抑制政策」A医療を受けられずに生命を落とす事態を発生させた「生命の選別」―の二つの観点から検証されねばならない。医療者・患者視点からの本格的な検証作業も必要である(協会役員等が執筆した書籍が近日刊行予定)。
府は3月に「新型コロナウイルス感染症対応の振り返り」を公表した。同文書は感染状況の推移と取組みを文字通り振り返る内容だが、20年1月30日から23年5月7日のコロナ感染死亡者は1674人、うち医療機関での死亡者は1382人、宿泊療養施設で1人、高齢者施設で228人、自宅で63人とした上で、高齢者施設・自宅での死亡者291人は介護医療院での死亡や積極的な治療を求めずに看取りとなった例など、入院調整の必要がなかったケースが約85%を占めたと断じている。
入院調整めぐる対応
これは協会が他団体と進めている調査とは違和感のある内容であり、真意を明らかにするため、京都社会保障推進協議会は4月4日、厚生労働省と意見交換した。協会事務局1人、社会福祉法人七野会理事長・井上ひろみ氏、京都社会保障推進協議会事務局長・松本隆浩氏、仲介いただいた倉林明子参議院議員の秘書が参加。厚労省からは老健局・医政局・障害保健福祉部の11人が対応した。
コロナ禍の都道府県の入院調整をめぐり、必要な医療が提供できていたか、高齢・障害・DNARを判断基準に用いる等の理不尽なトリアージによる人権侵害が生じていなかったかの調査を求めた。その上で、@高齢者は原則入院で、自宅療養等が認められるのは医師の判断があった場合。「医師」とは臨床の医師A入院判断は臨床の医師が行うもので、病床逼迫にあるかどうかは別の問題BDNARが画一的に入院判断に用いられているとしたら望ましくない―を確認した。医療者の立場からは当然すぎるが、極めて重要な原則である。
入院調整時のDNAR
4月10日、協会事務局2人、井上ひろみ氏、松本隆浩氏、懇談を仲介いただいた田中富士子府議会議員が府と懇談した。府からは健康福祉部健康対策課・健康福祉総務課、危機管理監付の担当者が出席した。
府は高齢者施設・自宅での死亡者のうち入院調整の必要がなかったケースは入院依頼がなかった人数だと説明。参加者は入院コントロールセンターへの全入院依頼数、入院数などさらに精致な調査を要請。コロナ禍で入院できなかった事例を検証せずに策定した感染症予防計画では今後のパンデミックでも同じことが繰り返されると強調した。
入院調整をめぐっては、府はDNARを入院調整の判断要件とするのは不適切と回答。感染症予防計画の第一種・二種協定指定医療機関の数値目標は、国のガイドラインにあるコロナ禍の感染拡大の最大時の数字を基に、医療機関の事前調査の結果を反映しているとし、今後医療機関向けの説明会などで周知を図り、柔軟に対応したいと応じた。
MENU