2024診療報酬こうみる 1  PDF

入院外(全体)初・再診料等引き上げは運動の成果も 医師の処方技術の軽視は遺憾

副理事長 福山 正紀

 本号より7回にわたって2024年度診療報酬改定の分析・評価を、入院外(全体)、入院・ 有床診、内科・在宅医療、外科・整形外科、小児科・産婦人科、眼科・耳鼻咽喉科、皮膚科・ 精神科の項目で掲載する。
 日常的な感染防止対策や職員の賃上げを理由に、初診料が3点、再診料・外来診療料(一般病床200床以上の病院の再診料)が各2点引き上げられた。基本診療料の引き上げは協会も長年要望してきた項目で評価したいところだが、微々たる引き上げに過ぎない。2018年から23年にかけて、1時間当たりの最低賃金額(全国加重平均)の引き上げ額は130円、1.15倍上昇した。加えてコロナ以後に求められる院内感染防止対策の費用負担もあり、2、3点程度の引き上げでは賄えない。
 静脈採血料、皮内・皮下および筋肉内注射、静脈内注射、点滴注射の手技料が3点(6歳未満100mL以上は4点)引き上がったが、物価上昇による注射器・注射針の値上げもある。
 許せないのは処方箋料の一律8点引き下げと、特定疾患処方管理加算1(18点)の廃止である。従来から協会は医師の処方技術の軽視を指摘してきた。また特処は「かかりつけ医師が総合的に病態分析を行い、それに基づく処方管理を行うことを評価した」点数であったが、否定されたことは許し難い。
影響は全診療科にも
 本体引き上げとされているが、賃上げ等で厚労・財務大臣合意で事前に定められた内容以外に、中医協の検討に委ねられた財源はわずかプラス0.18%に過ぎない。一方、改定された範囲は多岐に及ぶ。つまり点数の新設・引き上げのための財源を他の点数の引き下げ・廃止によって生み出したということである。
 引き下げ・廃止の最たるものが汎用点数の改悪である。内科では特定疾患療養管理料から糖尿病・高血圧・高脂血症を外したこと、特処1の廃止、特処2の10点引き下げ、処方箋料の一律8点引き下げ、薬剤情報提供料の6点引き下げである。しかし、内科だけが狙われたわけではない。人工腎臓の一律9点引き下げ、耳垢栓塞除去片側10点、両側20点引き下げ、眼底三次元画像解析10点、細隙灯顕微鏡検査(前眼部・後眼部)2点引き下げ、トリガーポイント注射10点引き下げ、汎用手術を対象とした短期滞在手術等基本料1の大幅引き下げその他、細かく見れば枚挙に暇がない。
 さらに、コロナの特例点数は全て3月末で廃止された。外来の院内感染防止対策は外来感染対策向上加算に新設された発熱患者等対応加算20点に引き継がれた格好だが、点数が低すぎる上に4、5月は算定できないことは納得できない。
診療報酬で医療DX
推進正しいのか
 初診料に医療DX推進体制整備加算8点(月1回)が新設された。オンライン請求・オンライン資格確認をしていれば届出はできるが、25年3月末までに電子処方箋、25年9月末までに電子カルテ情報共有サービス活用の体制、24年10月からはマイナ保険証の利用率を一定割合以上満たす必要がある。医療DXを否定するものではないが、推進は補助金等で行うべきものではないか。政府が掲げる目標に到達するためのインセンティブのようなやり方は納得しがたい。
 療養担当規則改定で、療養担当規則や施設基準などで院内掲示が求められている事項について、自院のウェブサイトに掲載しなければならないとされた。実施期日(経過措置)に注意されたい。自院のウェブサイトを持っていない場合は対応不要である。
ベースアップ評価料
実際に活用できるか
 外来・在宅ベースアップ評価料( )( )が新設された。賃上げ対象職種は医療関係職種とされ、医師と事務職員は含まれていない。( )では対象職員が常勤・非常勤を問わず1人以上勤務していれば届出・算定する。賃上げ計画と算定予想回数を確認し、対象となる12カ月間の1月当たりの給与総額の改善割合が1.2%未満であれば、( )の届出・算定ができる。24年度に対象職員の基本給等を23年度と比較して2・5%以上引き上げ、25年度に23年度と比較して4・5%以上引き上げた場合は、40歳未満の勤務医および事務職員等の賃金を実績に含めることができる。
 厚生労働省は評価料に関する解説動画と「ベースアップ評価料計算支援ツール」を公表している※。各診療所で看護職員、PT・OT・ST、マッサージ師などを雇用している場合は、試算してみてほしい。なお( )の場合、新規届出時と毎年6月に「賃金改善計画書」を厚生局へ届出し、毎年8月に「賃金改善実施報告書」を厚生局へ報告する必要がある。
 この点数に対する評価は分かれる。医師を含めた全職員と施設設備の改善にはこのような目的を狭めた点数ではなく、基本診療料の大幅引き上げで対処すべきであるというのが協会の考えだ。医業経営に手を突っ込まれているような不快感があると仰る会員もいる。「130万円の壁」問題についても検討が必要だ。
※厚労省ホームページ
「政策改定」極まる
 端的に言えることは24年度改定は「療養の給付」の改善というよりも、政府の掲げる政策推進のためのツールとされた面が強いことだ。いわゆる「政策改定」が極まった感がある。こんな改定でよいのか。「保険で良い医療」の提供を掲げる協会としては、次回26年度改定に向けてさらに診療報酬改善運動を強めなければならない。

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