協会は10月14日、京都外科医会と共催で、外科診療内容向上会を協会会議室(ウェブ併用)で開催した。京都済生会病院外科部長の富士信明氏が進行し、50人が参加した。協会の曽我部俊介理事から情報提供の後、外科医会例会の症例検討会が行われた。続く向上会では、京都第二赤十字病院外科部長の岡野真治氏を座長に、「足病に対する包括的アプローチ」と題して京都第二赤十字病院形成外科部長の恋水諄源氏の特別講演が行われた。
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恋水氏は、直立二足歩行を基礎として文化を発展させてきた人類にとって足はなくてはならない生活の礎と説明。自院での足病治療の実態と臨床倫理の問題を解説した。
足部潰瘍を主訴に受診する患者の多くは、動脈狭窄・閉塞、感染と糖尿病を背景に持つ包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の患者と紹介。CLTIの重症度と予後は Wifi 分類に基づき判断し、治療の原則を念頭に置きながら診察と検査を進め、創処置を行いながら生活状況も把握すると説明した。デブリードマン、開放創管理、植皮または皮弁による閉創が手術治療の原則だが、術後機能に配慮して治療するには最終的な切断高位と残存組織も考慮する必要があるとした。
足病治療で問題になることの多い倫理的論点にも言及した。大切断後に義足リハビリで歩けるかはやってみなくては分からない部分もあり、患者の意向を尊重しようとする「自律尊重原則」と最善の治療を提供しようとする「善行原則」で葛藤が生じると解説。当初はなるべく長く残す治療を希望していた患者でも、治療の具体的な説明の結果、切断による早期治癒に希望が変わることもあるとした。足病には高齢者も多く、認知症の患者もいるため、本人の意向ではなく家族の自己満足や介護都合によって治療方針が左右されていないかにも注意が必要とした。
理想的な方針決定のプロセスに必要なことは、正確な診断・医学的判断と同時に、治療に関する本人の価値観と強調。「どうしてそうしたいと思うのか」と問いかけ、本人が治療に求める本質を知ることが重要とした。早期発見・早期治療で早くから切断の可能性を知り考えてもらうことで、本人にとってより良く、医療者も納得できる方針決定ができるとした。