京都府は2月議会で4月からの新たな保健医療計画の最終案を報告した。今後正式策定する。背景に高齢化に伴う医療費増大見込みに対し、地域医療構想の推進等で医療費を低く抑える政策がある。
マイナス129億円の財政効果
―中期的な医療費推移
都道府県による医療費適正化施策の幹である医療費適正化計画にあたる「京都府中期的な医療費の推移に関する見通し(第4期)」は、府の高齢者人口が2040年に約81万人でピークを迎え(20年に29・5%であった高齢者〈65歳以上〉人口が40年に36・1%)、府民の5人に1人が後期高齢者になり、それに伴って医療費が増大すると見込む。これに対し、地域医療構想の推進や府民の健康保持(特定健康診査・特定保健指導実施率、喫煙率、糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数、「通いの場」@の参加率)や後発医薬品等の使用率向上などの取組み目標を達成することで、医療費見通しを低く抑えることができると推計。第4期の計画期間終了時の29年の医療費見通しは「取組み前」の1兆1636億円から1兆1507億円(マイナス129億円)になるとした。
府の良識発揮も
―府保健医療計画
上記計画と併せて策定される京都府保健医療計画の中間案については後述の感染症予防計画(中間案)と同時に、協会はすでにパブリックコメントを提出している(本紙3163号)。第8次となる今回の計画では、以前は別冊で策定された「京都府医師確保計画」も「地域の保健医療を支える人材の育成・基盤の整備」の項目に包含された。厚生労働省は新たな医師確保計画では医師多数都道府県(医師偏在指標による)において「目標医師数」の記載を促しているが府計画には記載がない。多数区域における目標医師数とは“医師数を減らす目標”となってしまうため、府の高い良識が発揮されたものと評価できる。
コロナ対策の総括が必要
―感染症予防計画
感染症予防計画は感染症法見直し(23年国会成立、24年4月1日実施)を受け、新型コロナウイルス感染症時の対応を基に、府と地域の医療機関が「医療措置協定」を締結し、新興・再興感染症パンデミック時に入院・発熱外来・自宅療養者への医療等に総掛かりで対応するもの。府としてコロナ対策の総括が明示的に行われないままの策定であり不十分さは拭えず、今後の展開に注視が必要である。
納付金大幅引き上げ
―府の国民健康保険
一方、医療提供体制と不可分な関係にある京都府の国民健康保険制度をめぐっては24年度の各市町村の支払うべき「納付金」の大幅引き上げが判明し、衝撃が走っている。
京都府では納付金には各市町村の医療費が100%反映しており、国が「加速化プラン」を準備して躍起になっている統一保険料を採用していない。したがっておおむね医療費の低い地域では(主として医療提供体制の脆弱性から)納付金が低く、市町村ごとに賦課される保険料も低い。24年度の納付金は平均で105・9%(一人当たりでは112・8%)になるとされ、笠置町や南山城村などの人口規模が小さい医療環境の厳しい地域でも大幅な引き上げである。だが京都社会保障推進協議会の聞き取り調査では多くの市町村が来年度の「据え置き」を決め、踏ん張ろうとしている。協会は京都社会保障推進協議会とともに国・府に対して各市町村の保険料高騰を回避する努力を支援し、国庫負担の引き上げや国の補助金増額を求めている。
都道府県による法定計画の策定年は診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等の同時改定と重なる。これは報酬と計画の見直しによって国の医療・福祉政策が地域や現場に持ち込まれることを意味している。医療・福祉サービスが後退しないよう、府や地方自治体や患者などとともに現場から意見を上げ続けることが必要である。
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@)厚労省ホームページは「通いの場とは、地域の住民同士が気軽に集い、一緒に活動内容を企画し、ふれあいを通して『生きがいづくり』『仲間づくり』の輪を広げる場所」であり「地域の介護予防の拠点となる場所でもあ」るとしている。地域包括ケアや地域共生社会の「社会資源」に位置付けられている。
2024年度 京都府
国保事業費納付金の算定結果
市町村 2024年度
納付金額(百万円) 1人当たり(円)
対前年度比(%) 対前年度比(%)
府全体 68,394 105.9 151,579 112.8
京都市 39,923 107.7 154,506 113.6
福知山市 1,730 101.7 152,428 111.2
舞鶴市 1,869 102.3 144,205 110.1
綾部市 790 98.9 135,717 111.0
宇治市 4,516 103.2 144,751 111.3
宮津市 514 99.8 139,248 110.0
亀岡市 2,323 105.2 143,077 113.2
城陽市 1,938 101.1 146,368 111.8
向日市 1,355 104.2 160,072 112.8
長岡京市 1,993 106.1 162,632 113.7
八幡市 1,950 102.1 142,865 109.9
京田辺市 1,602 105.1 154,029 111.8
京丹後市 1,578 102.0 148,572 111.5
南丹市 875 106.6 145,638 111.1
木津川市 1,905 105.6 146,457 111.8
大山崎町 367 101.9 147,150 110.1
久御山町 494 103.3 168,229 111.3
井手町 196 105.4 139,273 113.1
宇治田原町 274 100.7 155,004 109.0
笠置町 54 122.7 168,778 126.4
和束町 154 113.2 141,336 118.3
精華町 845 107.0 147,192 110.1
南山城村 94 111.9 145,481 123.0
伊根町 76 101.3 140,017 108.5
京丹波町 401 103.1 138,942 110.5
与謝野町 566 103.5 141,340 109.8
※市町村は納付金をベースに独自事業分(保健事業・条例減免等)を加味して保険料を設定
〈京都府資料から協会作成〉