薬剤不足という言葉が普通になってどれくらい経つだろう。端緒が約2年半以前のジェネリックメーカーの不祥事だったことは事実である。その背景には、ジェネリックメーカーの過当競争と薬価下落などの産業構造上の問題がある。実地医家の間で、「あれもない」「これもない」というのはあいさつのような文言になっているが、ジェネリックのみならず先発品も軒並み、ないない尽くしの嵐である▼先日、公的医療施設に出務すると鎮咳剤、去痰剤の類の在庫が皆無とのこと。まさしくこれらの薬剤は当該施設受診患者の最も欲するものであり、手足をもがれた状態に等しい状況なのである▼ないのは薬剤だけではない。すでに流行期に入ったと言われるインフルエンザであるが、昨今の発熱外来ではまさしく必須の新型コロナウイルスとの同時抗原検査キットが手に入らない。その影響で、単体の検査キットも不足している。さらに、糖尿病薬として新たに発売された薬剤が医家向けに回ってこない。全く違う分野で高価取引されるから、そちら優先に出回っているなどというまことしやかな「流言」を聞いて驚いたのは筆者のみではないはずだ▼全うに地道な医療を行うのにこれだけの支障がある昨今。行政は一体どちらの方向を向いているのだろうか。(登山子)
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