2024年度の診療報酬改定に向け医療界は一致して大幅なプラス改定を求めている。
これに対して財務省財政制度等審議会(財政審)は「2024年度改定においては、診療所の極めて良好な経営状況等を踏まえ、診療所の報酬単価を引き下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当」と表明した。社会保障審議会医療部会、保険部会の報酬改定基本方針議論をけん制する挑戦的な内容だ。
新型コロナウイルス対策補助金746億円を、国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)から返納させて防衛費に充てたばかりである。財政審の主張はこれを診療報酬に組み込んで前倒ししようというものだ。
新型コロナウイルス感染症と今後の新興感染症に対する施策の拡充が求められている。改正感染症法では医療措置協定締結が定められた。都道府県から協定締結医療機関になるよう要請があれば、全ての医療機関には協議に応じる義務が課されている。設備やマンパワーなどの裏付けになる診療報酬対応は政府の義務ではないか。感染症対応に十分な病室や居室の環境整備、ICT関連の整備も重要である。今後の地域医療体制維持のため、地域に密着した医療機関を適切に評価して支える視点も欠かせない。
国民皆保険制度の原則の一つは、国民全員が公的医療保険で保障される(厚労省)ことである。財政審は、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」が原則だとしてこれを真っ向から否定している。防衛費を聖域化したまま、プライマリーバランスのつけを医療制度に回す論理にほかならない。
「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」のが骨太方針2023である。国民の安全保障のための予算編成と診療報酬改定を求めたい。社会保障など国民生活関連分野の予算を防衛費に献上するのではなく、とりわけ医療、介護、福祉の権利保障という観点からバランスを取るべきである。
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