丹後くろまつ ほどよいほろよい列車(京都丹後鉄道)
京都から舞鶴、丹後半島の久美浜まで向かう特急まいづる・はしだて号が、1本だけ京都丹後鉄道自慢の「丹後の海」の車両で運行されています。数々の有名列車のデザインをされた水戸岡鋭治氏が、往年のタンゴディスカバリー号に使用されていたKTR8000系をリニューアルした車両で、丹後の美しい海を表す「海の京都」のイメージの藍色メタリックの車体です。丸い顔をした気動車特急列車の車内は、天井と壁は白樺、床が楢、座席が楓。木に囲まれた客室の内装は和のテイスト。藍染の暖簾が客室の境に掛かり、暖簾をくぐれば山の京都、この味わい深い列車で、ある日、舞鶴に向かいました。
西舞鶴には北近畿タンゴ鉄道以来の車庫と整備工場があり、さまざまな車両を身近に鑑賞できます。音楽ホーンで一世を風靡した往年のタンゴエクスプローラー号の懐かしい車両も残されています。ラッピングやいろいろなヘッドマークを付けたKTR700系車両が並んでいます。
予約しておいた「丹後くろまつ」に乗車します(写真1)。普通車両のKTR700系を水戸岡鋭治デザインでリノベートしたグルメ観光列車です。タンゴは踊りませんが、タンゴレディの案内で沿線の味覚をたんと堪能できるレストラン列車です(写真2)。この時は、日本海の海の幸をふんだんに用いた小料理と名産物を肴に地酒を楽しむという居酒屋列車でありました(写真3)。
由良川鉄橋の上では前方展望も左右に広がる車窓光景も素晴らしい。線路の下は波光煌く水面、北は洋々たる日本海、南は悠々と流れる由良の川と里山の眺望が広がっています。日本海の間際を走るのは束の間。由良の浜を過ぎれば断崖の上、列車はちょこちょこ停まりながらゆっくり進みます。由良の川と海岸線をゆらゆら車内で揺られれば、お酒で頭も揺れてまいります。宮津駅では反対ホームに(舞鶴行の)「丹後あおまつ」(写真4)。乗り継いだ宮福線の(予約が要らない)「丹後あかまつ」と合わせて、水戸岡デザインの“タンゴ三松”と称します。鬼の博物館がある宮福線の大江駅では宮福線オリジナルのレトロな緑の箱型列車MF200型と行き違いました。終着の福知山では、“麒麟がくる”の明智光秀が築城した福知山城を訪れて、夕暮れまで漫遊した北京都の鉄旅でした。
今回の推し地酒。純米大吟醸 香田 50磨き(ハクレイ酒造、丹後由良、京都)。
(丹後くろまつ 2020年3月乗)