残暑お見舞い申し上げます 2023年 夏 京都府保険医協会 役員・事務局一同  PDF

望郷の思い
遠藤 裕(北)

 豪放磊落な李白、沈思黙考な杜甫の故郷を思う歌が『漢詩100篇』に載っていました。
頭(こうべ)を低(た)れて故郷を思う [静(せい)夜(や)思(し)]    李白

牀前(しょうぜん)月光を看る、
疑(うたが)うらくは是(こ)れ地上の霜かと。
頭(こうべ)を挙(あ)げて山月を望み、
頭(こうべ)を低(た)れて故郷を思う。

[訳] 寝台のあたりに月の光が差し込んできて、
   あまりの白さに霜が下りたのではないかと思った。
   頭をあげて山にかかる月を眺めていると、
   故郷への思いが募って、ひとりでに頭がたれてくる。

山は青くして花燃えんと欲す [絶句]  杜甫

江(こう)は碧(みどり)にして鳥(とり)愈(いよ)いよ白く、
山青くして花(はな)然(も)えんと欲す。
今春看(み)すみす又(また)過(す)ぐ、
何(いず)れの日か是(こ)れ帰(き)年(ねん)ならん。

[訳] 川は新緑に映え、鳥の白さがいちだんと際立つ。
   山は緑一色で、花は燃えんばかりに咲いている。
   今年の春もあっという間に過ぎ去って行く。
   いったい、いつになったら故郷に帰れるのか。

2人の思いが、ひしひしと伝わってきます。
守屋洋著『日本語力がつく漢詩100篇』角川マガジンズ

ページの先頭へ