実施時期=2023年6月9日~6月23日
対象者=代議員83人、回答数=33人(回答率40%)
デジタル化必要も強権的政策は問題
4月からオンライン資格確認が原則義務化されたが、対応が困難な会員もいるのが実態である。厚労省は6月7日の「規制改革実施計画」を根拠に、レセプトのオンライン請求100%化に向けてロードマップを発表し、CD―R等で提出している医療機関のオンライン請求への移行を促すとしている。さらに政府は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、電子カルテを「26年度までに80%、30年度までに100%」普及させるとの目標を掲げている。
一方、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、ここ2、3年の間に、オンライン診療が普及した。受診が抑制される中、オンライン診療(情報通信機器を用いた診療:テレビ電話、PC、スマホアプリなど)の届出を行った会員も多いと思われる。
以上、政府が進める医療DXに関わる状況について、代議員の実態を聞いた。
オン資義務化の猶予届出は18%
顔認証付きカードリーダーを用いたマイナンバーカードによるオンライン資格確認システムの設置と運用について聞いた。「23年3月31日以前から設置・運用している」「23年4月1日以降、設置・運用している」は合わせて70%。一方、「猶予措置を届けており、締切までに設置・運用予定」が18%であった。その他は「猶予措置を届け出ているが、設置・運用する気はない」「設置したが運用していない」など(図1)。
次に、「設置・運用している」70%の会員に、患者のポータルサイトにアクセスして、患者の薬剤情報や特定健診情報、その他の医療情報を閲覧・活用しているかを質問したところ、「活用していない」が73%に上った(図2)。薬剤情報や特定健診情報の閲覧は、マイナカードによるオンライン資格確認の場合のみ可能で、保険証による確認では不可能だ。現状、マイナカードで受診する患者は非常に少ないため、このような結果になったと考えられる。また、閲覧しようとしても情報に辿り着けない、情報が入っていない場合が多い。「活用しようとしても、活用できる状態にない」のが現状であると考えられる。
CD-R等での請求者の5割がオンライン請求の移行予定なし
レセプト請求方法については、「オンライン請求」が58%、「CD―R等による電子請求」が42%(図3)。「印刷して紙レセプトで請求」「手書き紙レセプト請求」の回答はなかった。
「CD―R等による電子請求」と回答した会員に、オンライン請求の移行予定を聞いたところ、50%が「移行する予定はない」と回答した(図4)。
厚労省は請求省令を改正し、24年度から新規開業の場合は「オンライン請求」を義務化し、すでに「CD―R等による電子請求」を行っている医療機関には、毎年オンライン診療への移行計画を出させる方針だ。
オンライン診療の届出はなし
電子カルテについては「採用していない」が58%、「採用し、使用している」が39%であった(図5)。
オンライン診療の実施は、「実施していない(実施しても電話再診のみ)」が91%、「コロナ特例で、電話初診のみ対応している」が9%で、「オンライン診療を届け出て、すでに実施している」との回答はなかった(図6)。
この2問への回答の傾向は、協会の代議員が比較的ベテランが多いことに起因するものと思われる。
医療DXは使うものであり使われるものではない
自由意見欄では「医療だけがデジタル化を拒むわけにはいかない」「医療DXを段階的に進めることは良いこと。ただし、政府は順序を間違えている」「(オン資確認について)前もっての試験で多々想定されていない。日本政府の場当たり的、強権的政策に問題がある」「子どもでマイナンバーカードを持って来る人はほとんどいません」などの意見があった。
厚労省資料によると、医療DX―医療分野におけるデジタル革命は「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義できる」としている。
しかし、医療機関に迫られているオンライン資格確認義務化やオンライン請求の100%移行などは、本来は行政や保険者が担うべき事務行為を医療機関の負担に転嫁させるものばかりである。医療DXの旗の下、医療機関が「いいように使われている」ようではいけない。また、強行される施策により、会員医療機関が廃院に追い込まれる事態は避けなければならない。協会は医療分野でのデジタル活用を否定するものではないが、諸施策の是非は一つひとつ慎重に見極めていきたい。
図1オンライン資格確認システムの設置と運用
図2患者のポータルサイトで薬剤情報などの閲覧・活用
図3レセプト請求方法
図4オンライン請求へ移行する予定
図5電子カルテの採用
図6オンライン診療の実施