24年度改定に向け厚労省交渉 院内感染対策と人材確保が必須 診療報酬本体の大幅引き上げを  PDF

 協会は7月18日、厚生労働省に「24年度診療報酬改定に関する要望書」を提出し改善要請をウェブで実施した。協会から福山副理事長、吉河・種田・植田・坂本理事、関顧問が参加。厚生労働省保険局医療課の加古敦也主査、竹内海斗主査が対応した。要請は参院厚労委員の倉林明子議員に仲介いただいた。要請にあたり、6月中に会員から集約した24年度診療報酬改定に関する要請署名176筆を事前に保険局医療課宛に送付した。

 最初に要請署名に挙げた24項目について厚労省からの回答を得た。24年度改定ではネットでプラスとなるよう、診療報酬本体の大幅引き上げを求めたことに対して、厚労省は「『骨太の方針』に基づき、昨今の物価高騰、賃金上昇、医療機関の経営状況を踏まえつつ、患者の保険料負担や利用者負担への影響も総合的に勘案しながら、必要な対応を行っていきたい」と回答した。院内感染防止対策などへの対応として、初・再診料の大幅引き上げを求めたことに対しては、厚労省は「恒常的な感染症対応への見直しを行うこととしており、中医協で議論する」と回答した。
 フリーアクセス制限につながる「かかりつけ医」の制度化を診療報酬で行わないことを求めたことに関しては、厚労省は「外来機能の分化・連携を進めるにあたり、診療報酬による取組みを行ってきた。医療法に関する議論にも関わるが、必要に応じて中医協で議論する」と回答した。外来の看護職員の配置、医師事務作業補助者、医療事務担当者の配置の評価の新設に対しては、厚労省は「看護職員の配置、医師事務作業補助者について、外来医療での貢献は重々承知している」と述べるものの、医療事務担当者の役割については言及しなかった。
 その他、協会が地区医師会や専門医会と行った懇談会で要望が出された「個別技術の見直しや新規技術評価の新設」について、厚労省は医療技術評価分科会での学会からの直接ヒアリングを受けて具体的に検討を行うと回答した。

在医総管の単一建物居住者
CL検査料など是正求める

 回答を受けて、協会からは特に以下の項目について要請した。
 まず、初・再診料、入院料等の基本診療料について、「国策として賃金引き上げが謳われているが、残念ながら医療機関には全く原資がない。基本診療料を引き上げてもらわないと、医療機関は立ちゆかない」「賃上げしないと地域で人材を確保できない。都市部でも人材確保が難しくなっている。制度はあっても医療が提供できない状況になってしまう」と、危機的状況であることを強く訴えた。
 また、在宅時医学総合管理料の単一建物居住者の取扱い(同一月の対象患者が増えると点数が逓減される)について、「個々の患者に対してオーダーメイドの医療計画を立てており、人数による逓減は不合理だ」「点数表は『療養の給付』つまり医療の現物給付であり、国民が受ける医療水準を担保するものだ。多くの人数を見れば点数を下げるという一物多価の設定では、国が低い医療水準で良いと規定している議論となり、重大な齟齬を生じかねない。見直すべきだ」と改善を要請した。
 さらに、コンタクトレンズ検査料の取扱い(一度算定すると、どれだけ受診期間が開いても再診となる)は過去一部不当な請求を行う医療機関があり、ペナルティとして導入されたものだが、多くの患者が通販でコンタクトレンズを買う現状ではこのようなペナルティ的な取扱いが残るのは不当であると強く訴えた。
 その他、有床診療所在宅患者支援病床初期加算の施設基準について、高齢多死社会の進展を念頭に置いた「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」による指針策定は産婦人科の有床診療所では全く馴染まないこと、医療機関において薬価差がほとんどない現状において、内服薬7剤以上を処方した場合の処方料・処方箋料・薬剤料の逓減は全く不合理であること、院内投薬を行う医療機関における一包化の評価の新設―などを強く訴えた。
 協会の要請を受けて厚労省は「重く受け止めた」としたものの、「現場の実態は大事な意見だが、全国的なものかどうか。保険者や国民に対する説明責任もあるため、データが必要」と応じた。協会は「これらの切実な訴えに地域性はない。全国の保険医療機関が全く同じ悩みを持っている」と理解を促した。
 集約した会員署名は、7月28日の保団連の厚労省交渉に合わせて、京都選出国会議員に手渡した。中医協委員へは8月9日郵送して改善を要請した。次回改定で改善が得られるよう、運動を続けたい。

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