乗り鉄ドクの趣楽悠遊 vol.2 村上 匡孝(綴喜) 花嫁のれん 他所では乗れん列車の味どころ(JR西日本)  PDF

 長谷川等伯ゆかりの地である能登の七尾。能登食彩市場で海の幸に舌鼓を打ち、地元お手製の“かぶら寿司”を買い込み、花嫁のれん館を訪れました。
 花嫁のれんとは、幕末から伝わる加賀藩の能登・加賀・越中の商家の婚礼風習で、嫁の婚礼の際に幸せを願い、色鮮やかな暖簾を嫁ぐ娘に持たせた風習のこと。「暖簾が風になびくように、婚家の家風に早くなびきますように」と願いを込めて花嫁に渡されます。婚礼の当日、嫁ぎ先の仏間の入口に掛けられた暖簾を花嫁がくぐり、ご仏前でお参りすることで先祖へのあいさつとし、花嫁とその家に新たな絆が生まれるとされます。
 ちょうど婚家に嫁ぐ花嫁が仏間に入る場面の撮影収録がされている時に訪れたので、詳細をリアルに見ることができました。お輿入れの時の一度しか使わず仕舞い込まれてしまう花嫁のれん。商家に眠っていた明治から平成までの逸品の数々が並ぶさまは壮観です。
 七尾駅からJR西日本の観光列車「花嫁のれん号」に乗って金沢に向かいます。キハ48型気動車を改造、改装した“和と美のおもてなし”をコンセプトとする2両編成の豪華列車です(写真1)。北陸の伝統工芸である輪島塗や加賀友禅をイメージした外観は、赤い車体に金色に縁どられた黒い帯を巻き、車体とスカート部分まで着物をまとったような華やかなラッピングがされています(写真2)。
 加賀水引の淡路結びをモチーフにした列車のロゴは、花嫁のれんをくぐる神聖で幸せな気持ちと末永くお付き合いしたい気持ちを表し、人と人、心と心を結ぶ列車ということです。
 1号車は“ゆったりと寛ぎの旅を楽しめる空間”。加賀友禅のオールドコレクションをあしらった装飾の八つの半個室ブースがあり、日本庭園の飛び石をイメージした絨毯が通路に敷き詰められています。
 2号車は“賑やかに旅を楽しめる空間”のオープン座席。通路には流水をイメージしたカーペットが敷かれ、内装は輪島塗の図柄でいっぱいです(写真3)。
 車内では、金沢の老舗料亭「大友楼」の和惣菜満載の豪華料理と能登の地酒である宗玄純米吟醸が旅を相伴してくれます。美味に舌鼓をうち、美酒の杯を傾け、美女アテンダントと会話、美景は日本海の夕陽…。
 嗜好を満たす至高のローカル鉄道です。
 今回の推し地酒。遊穂(御祖酒造、羽咋市)。美味しい食中酒です。
 (花嫁のれん 2021年2月乗)

ページの先頭へ