コロナ禍で行政などのIT化が世界の中で大きく遅れていたことが暴露された日本。政府はシャカリキになって挽回を図っている。しかし、金力(と言っても税金)と権力を剥き出しにIT化、DX化を進めているその姿にこそ劣後の本質がある。
IT後進国の利点は、IT先進国がどういう状況になるか観察できることにある。すると、二つの典型例がすぐに浮かぶ。「北欧型」と「中国型」である。いずれも個人情報の政府管理的側面を有しているが、前者は国民が国を信頼し、透明性・公平性のある政策・行政サービスを享受しているイメージ。後者は国が国民を信用せず、監視・検閲・情報統制・行動規制など国民管理を徹底しているイメージ。
この両モデルの根本を分界する指標は何か。まず法的な側面。欧州ではGDPR(一般データ保護規則)などで個人情報の保護とその取り扱いの自己決定権を優先している。中国では国家安全法やインターネット情報サービス管理規定などにより国家機関が個人や企業の情報を閲覧・強制取得できる権限を有し、突然のSNS削除等々の国家介入が法執行されている。
次に政治的・社会的背景。指標例として世界ランキング調査では、①報道の自由度(特に重要)②行政の透明度③ジェンダーギャップ指数④LGBTQ容認度―において北欧諸国は全て上位を占めている。他方、中国はいずれも下位。政治・社会の透明性や言論・多様性容認の自由度、公平性が大きく異なる。これらのランキングは調査機関・方法・項目や対象の選択、それぞれの社会の歴史的背景等々でバイアスがかかっており解釈には注意を要するが、国の在り方の本質的差異は分かる。
では日本は? それぞれ①71位(180国中・年々低下中)②31位(122国中)③116位(146国中)④66位(174国中)といずれも低め。また、OECD20カ国における政府に対する国民の信頼度調査では北欧諸国はいずれも上位を占めるが、日本は19位。これらの所見を総合すると、日本の現状は「中国型」に親和性が高いと危惧され、危機感を強く感じる。では本当に日本国民は中国型の監視・統制社会を望むか。ポイントや利便性の喧伝に浮かれている場合ではないだろう。ここはいったん立ち止まり、根本に立ち返り、日本のあるべきIT化を展望して制度を点検・再構築すべきである。
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