地域の医療ニーズにしっかり応えたい
コロナ禍の開業で実感
コロナ禍に開業した医療機関の実態を知るため、八幡市のむらたファミリークリニック・村田真野医師に4月6日、インタビューした。クリニックは男山団地の住宅街の中にあり、近くに男山病院、小学校がある。第5波が収束しつつあった2021年10月に開業された。
村田 真野 医師に聞く
当初の予定よりも半年遅らせての開業だった。コロナ禍で感染症対応ができなければ意味がないという意気込みで開業した。今振り返ると、コロナ禍だったからこそ、この時期に開業して良かった。というのは、周りに発熱外来をしている医療機関が少なかったので、「かかりつけ医で診てもらえなかった」「休日診療所で診てもらえなかった」と言って来られる患者さんが開業直後から多かったからだ。この1年でコロナ陽性の届出件数は900件程になった。感染症の専門ではないが、感染症を診られる医師として地域の患者さんの役に立てたと思っている。
コロナ対応と通常診療は動線分離を徹底
最初にクリニックを設計する時に、感染症対策としてしっかりと動線を確保するようにした。小児科疾患の8割は感染症なので、そこは意識していた。最近は保護者の意向で動線を分けない設計やキッズスペースを設けることも多いが、感染症対応の点で動線分離は基本である。
当院では発熱の有無で受付をAとBに分け、発熱患者さんを院内に入れないようにしている。発熱患者さんは駐車場で検査し、コロナワクチン接種もドライブスルー方式で行っている。ワクチン接種の翌日に発熱され、検査したらコロナ陽性だった人もあった。そのことからもコロナ対応は通常診療としっかり分けることが大事だと実感した。
地域の発熱外来と
して奮闘
開業当初のスタッフの人数は5人だったが、あまりにも忙しくて休みを取ってもらえないので、少しずつ増やして今は10人にもなった。開業した頃は、医療現場が発熱外来をするとなると、スタッフが辞めても新規採用することが難しい時期だった。当院は開業当初から発熱外来をしているが、幸いスタッフも頑張ってついてきてくれているのでありがたく思っている。
医療はインフラ、このコロナ禍を通して、地域の患者さんのニーズにしっかりと応えていくことが大事だと再認識した。余談だが、近所の年配の男性に、「先生は和歌山の紀伊國屋文左衛門みたいやな」と言われた。昔、紀州から江戸まで嵐の中、みかんを運んだという伝説の人である。良い例えなのかどうか…。
5類移行後も感染症対策の基本で対応
コロナが5類になっても医療機関としての対応は何も変わらないと思う。感染症対策はマスクと換気が昔からの基本で、コロナ禍でそれがあらためて大事だと社会に浸透してきたといえる。これまで多くのコロナ患者さんを診てきて、院内感染もなくやってこられた自信とともに、スタッフに少し緩みが出てきているので、改めて気を引き締めていかなければいけないと思っている。コロナでの小児の死亡が少なかったのは幸いだった。小児の死亡率がもっと高かったら、社会的な影響はどうなっていただろうか。感染症の中でも、コロナはしっかりと感染対策をしていけるものだと思っている。
5類後に危惧するのは診療報酬点数が減ることで、せめて院内トリアージ実施料(特例)は残してほしい。