国は「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について」(2023年1月27日)において、5月8日より新型コロナウイルスを感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)上の「新型インフルエンザ等感染症」に「該当しない」ものとし、5類感染症へ移行する※。
協会は2020年1月に初めて日本国内の陽性者が確認されて以降、国および地方自治体に対し、コロナに感染した人たちの生命と人権、そして医師・医療機関・スタッフへの支援を求める要請や情報発信に取り組んできた。とりわけ、歴史的な医療費抑制、公衆衛生軽視の政治が生み出した医療や保健所のひっ迫において、医療にアクセスすることなく生命を落とす人たちが発生する事態を問題視。公的な責任において確実な医療保障を可能にする行政を強く求めてきた。22年6月からは高齢者・障害のある人たちの入所施設における「留め置き死」解消を求め、福祉関係団体とともに調査、要請、メディアへの発信を繰り返している(下表参照)。
今回の国による「5類移行」によって危惧されるのは、新型コロナの正確な感染状況が把握・公表されなくなり、まるでウイルスが消滅したかのような社会の空気が醸成されることである。その一方で、コロナ禍によって露呈した日本の医療・公衆衛生・社会福祉制度の脆弱さが不問にされ、入院・外来ともに医療機関への支援も打ち切られ、患者の苦難が続き、人々の知らないうちに死亡者が増え続けることになりかねない。
協会は3月24日、「コロナ死亡者を不可視化してはならない」と理事長談話を発表。あわせて京都府知事宛に要請書を提出した。
3年余に及ぶ新型コロナとの闘いは新たな局面を迎えつつある。引き続き協会は新型コロナのみならず新興・再興感染症が蔓延するいかなる事態にあっても、国民皆保険における医療保障が途切れることのないよう、会員とともに取り組みを進めたい。
※厚生労働省の発出した「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について」(23年3月10日)はグリーンペーパーNo319(3月25日発行)に全文掲載している。ご一読いただきたい。