主張 10月からのインボイス制度 課税事業者への登録は熟考を  PDF

 10月からインボイス制度が始まるが、まず消費税の仕組みを簡単に説明する。ある商品をA社がB卸に660円で販売、B卸はC小売店に1100円で販売。C小売店は消費者に2200円で売ったとすると、A社は660円のうち60円を消費税として納付することになる(ここではA社の原価に対する支払い済みの消費税は無視する)。B卸は受け取っている100円の消費税のうち、A社に支払い済みの60円を「仕入税額控除※」した残りの40円を納付。同様にC小売店は200円―100円=100円の消費税を納付するのが消費税の仕組みである。合計60円+40円+100円=200円が納付されることになるが、B卸が消費税免税事業者の場合は40円が納付されないので合計160円しか納付されないことになる。
 今回のインボイス制度の導入は益税をなくすためとされているが、免税事業者のB卸はインボイスを発行できないため、C小売店はB卸に支払った消費税分100円が仕入税額控除できなくなり、200円の消費税を納付しなければならなくなる。結果、C小売店はB卸と価格引き下げ交渉をするか他の卸から仕入れをすることになると、B卸は存続できないことになりかねない。医療機関はB卸と同じ立場になりかねないことになる。ただし医療機関の自由診療は多くの場合、仕入税額控除に使われることはなく、インボイスは求められない可能性が高いが、企業などの集団健診や予防接種で求められる可能性がある。インボイスを発行するためには課税事業者になる必要がある。
 インボイスを発行する場合、9月30日までに登録すれば10月1日からの制度の開始に間に合うため、熟考していただければと考える。21年に新型コロナワクチン接種により自由診療1千万円を超過して課税事業者となった医療機関もあると思う。課税事業者になったからとインボイス発行の登録をすると、免税事業者に戻る時に、登録取り下げの手続きや取引先へのインボイス発行の廃止を周知する必要が出てくる。顧問税理士と十分にご相談いただきたい。ご不明な点は協会にお気軽にお問い合わせいただき、税務の相談室もご活用を。
 インボイス制度の開始後は消費税課税の厳格化(例えば免税事業者や簡易課税の条件の厳格化など)も想定されるため、注視していきたいと考える。
 ※消費税を算出する際に課税売上の消費税額から課税仕入れの消費税額を差し引くこと

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