診療録の記載は具体的・客観的に 医療安全講習会を開催  PDF

 協会は11月12日、国立病院機構姫路医療センター元教育研修室長・研修オフィスshima代表の嶋崎明美氏を講師に迎え、「情報共有と医事紛争防止のための診療録記載」をテーマに医療安全講習会をウェブで開催した。本講習会は、全国の保険医協会・医会会員医療機関からも参加を募り、93人が参加した。
 講演では、嶋崎氏が冒頭、診療録は主治医や担当看護師に限らず患者にかかわる全ての医療者が、疾患の状態や治療方針などの共通認識を持つことができるように記載することが重要だと述べた。
 次に、患者との情報共有の観点からインフォームド・コンセントについて解説。医療者が治療方針などについて十分な説明を行ったかを判断するのは患者であり、患者が理解していなければ後日トラブルになる可能性があると指摘し、患者の理解・納得を得るために工夫すべき点を挙げた。
 また、暴言・暴力といった対応困難患者の診療録には、患者の発言内容や行動、要求内容などを具体的かつ客観的に記載することがポイントであり、そういった患者の対応上の注意点などは診療録とは別のものに記載しておくべきであるとした。さらに、診療録は患者側から請求があれば開示されるため、倫理に配慮した記録でなければならないと述べ、例文を基に適切な記載内容について解説。例えば、「患者の理解力が悪い」と記載するのではなく「3回説明を繰り返したが『わからない』と言う」「本人以外、家族にも説明が必要」といった表現が適切であるとした。その他、診療記録について、裁判で問題となる記録や望ましい記載方法について解説した。
 最後に、診療録記載の改善を図るための研修として「模擬カルテ」開示を紹介し、さらに、医事紛争の原因は患者との関係や医療行為だけでなく診療録記載にもあるため、診療録には患者側が納得できるように診療のプロセスを明示すべきだと述べた。
 講演後の質疑応答では、コロナ渦のため患者家族に電話で治療方針を説明した場合の診療録の記載方法や、診療記録のチェック方法などについて質問が寄せられた。
 本講習会の模様は、期間限定で協会ホームページで配信している。左記QRコードよりご覧いただき、医療安全研修にご活用いただきたい。

ページの先頭へ