12月15日、西脇隆俊知事が京都府議会で2022年6月15日~11月末までの新型コロナウイルス感染症による社会福祉施設での死亡者が92人に上ったことを議会で明らかにした。
協会は第6波以降、福祉関係者とともに高齢者・障害のある人の入所施設での「留め置き」について、解消を求めて調査活動や要請活動など、さまざまな取り組みを進めてきた。府も事態を受け、地域の医師の協力を得て、往診コーディネートチームや施設内感染専門サポートチームを立ち上げるなどの対応に努力している。だが今回の「92人」もの死亡者数は、防ぎきれないクラスター発生、生活施設での医療の限界、重篤化しても入院できない実態は解消されておらず、引き続き留め置き死が発生し続けていることを鮮明にしたと言えるだろう。
今日、「留め置き」をめぐり重大な疑問として浮上しているのが、「京都府入院医療コントロールセンター」は「入院調整」において、「入院可否」判断を行っているか否かである。協会が把握している事例には、入所施設に限らず自宅療養者についても、コントロールセンターによる入院の可否判断がなされているとしか考えられないものがある。
協会は11月17日、府知事宛に提出した「新型コロナウイルス感染症第8波を見越した医療体制の強化等を求める要請書」(本紙3134号既報)で、「コントロールセンターの『入院調整』とは、保健所の圏域を超え、広域的な入院が可能となるよう、すべてのコロナ患者受入れ病床の空床状況などを把握し、スムーズに医療の提供を実現するものであり、『入院の可否』判断を行うものではないと考えているが、間違いないか」と質問を投げかけ、対応した府の担当者よりセンターは「入院先を調整している」つまり、可否判断を行うものではないと回答を正式に得ている。
しかし、具体的な事例では保健所職員や消防隊員がセンターとやり取りを繰り返す中で「コントロールセンターが入院不可と言っている」との言葉が頻出している。同29日には鈴木理事長が直接府に出向き、福祉関係者はじめ他団体とともにコントロールセンターの「入院不可」判断で入院できず、生命の危機に瀕した施設入所者の具体的な事例を示して問い質した。
臨床でコロナ患者と向き合う地域の医師による「入院が必要」との判断を、臨床にいない府のコントロールセンターがそれを覆すなどということが常態化しているとすれば穏やかではない。現実に病床ひっ迫は深刻だが、行政が入院の可否判断自体にまで踏み込むことは許されるのだろうか。府知事は「入院の必要な人は入院していただいている」との答弁を繰り返しているが、それでは第7波において死亡した92人の施設入所者の方は本当に入院の必要がなかった人たちなのか、誰がそれを判断したのか、という問題が燻り続ける。
なお、知事は12月15日の議会では次のようにも述べている。「単にコロナ感染症の症状のみをもって判断しているわけではなくて、総合的に判断をして、限られた医療資源の中から最善の療養方針を決定している」。極めて重大な答弁であり、先の「入院の可否判断を行うものではない」という答弁と矛盾する。一体何が本当なのか。
協会は11月17日の要請において、コロナの「全死亡事例の詳細を把握し、調査・ケーススタディ」し、「第3者の専門家も加えた検証・総括とそれを踏まえた対応」を強く求め、その上で「入院調整にあたっては陽性診断した医師とコントロールセンターの医師が直接協議する仕組みを導入」するよう踏み込んだ提案をしている。医療政策は命の問題であり、単なる行政システムの話では済まない。府が誠実にこの事態に向き合い、早急に検証と総括、改善策を打ち出すことが求められている。
※府議会・総合計画特別委員会知事総括質疑をもとに作成。府内死亡者数は厚労省データより引用。
(表)※
新型コロナ府内死亡者数