医界寸評  PDF

 来週11月30日は、いい看取り・看取られ「人生会議」の日とされている。ACPの愛称を「人生会議」と厚労省が決定し発表して4年経つ。いまだ寸評子にはしっくりこない▼「京丹後市認知症とともに生きるまちづくり条例」の中に認知症予防の意義を、「認知症になるのを遅らせることまたは認知症になっても進行を緩やかにすることをいう」と定めている。予防というとならないことと思われると困るから、適当な言葉がなく苦労したのであろう▼江戸から明治時代初期には、欧米から流入してくる言葉をその時の知識人が新しい和製漢語を作って対応していた。医学用語でも蘭学事始にあるように苦労して和製漢語を生み出している。中華人民共和国の人民と共和国は和製漢語とのこと、本場でも使われるほどの出来栄えなのであろう。電信、電話などまではできたが、ラジオ、テレビの頃になるとカタカナで済ますようになり、今や、カタカナ語の氾濫が起こっている。ドンドン日本人の漢語力が落ちている▼最近とみに気になるのが、「既往歴」という言葉の使い方である。「既往」すなわち、「既に往った」なのに、既往歴にアルツハイマー型認知症などと書いてあるのを見ると、ついついノーベル賞ものと思ってしまう。言葉の意味は変わっても、漢字本来の意味は変わらないはずなのに。(門雀庵)

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