主張 “マイナンバー”に立ち返れ  PDF

 河野大臣の実行力は定評がある。オンライン資格確認の義務化とマイナンバーカード(マイナカード)の保険証化、従来の保険証廃止をぶちあげて、マイナカードの発行所持の義務化をぐいぐい現実化しようとしている。 マイナカードの保険証化はともかく、従来の保険証廃止には協会は反対である。マイナカードの所持使用は、自分の行政データに関する権利として自己決定されるべきものである。しかし国の本気度を見れば、それらを撤回させる努力とともに、実現された時に起こる問題を最小化することも目指さなければならない。
 岸田首相は、保険証機能を持つマイナンバーカード(マイナ保険証)を持たなくても不都合のないシステムをつくると発言したが、それが可能であればそもそもマイナ保険証自体が要らない。不便は必ずある。医療等へのアクセスへの致命的な制約の有無を検証するお手盛りでないシステムを準備し、発生した問題が解決しないなら撤回もためらうべきではない。
 国民に番号を割り振って各個人の公的データを紐付けすることは、デジタル化社会として避けられない。自身のデータへの簡易なアクセスなど、国民にとっての利便がまず求められる。デジタル国家の名目で、マイナカードを用いた国民側の各種行政手続きがひたすら増えることを危惧する。各データがオンラインでつながれば、情報へのアクセスを悪用する試みも常にあるだろう。そこまで踏まえた管理システムのセキュリティを求める。
 アメリカでは社会保障番号が個人証明の基本になる。韓国では、身分証に付与された住民登録番号で個人のデータにアクセスできる。ともに、番号そのものを使うシステムである。
 本来、日本のマイナンバー構想も番号そのものが重要だったはずである。カードを目隠しカバーに入れ、番号は人に見せないという規則が初めにあった。ところが日本の場合は、カードそのものを個人認証の道具にしてしまった。自らのデータにアクセスする手段を各医療機関において保証する構想は理解できるものの、番号だけでは悪用されないという理由で、むしろハードウェアとしてのカードの重要性が前面にきつつある。オンライン資格確認の性急な義務化のために、カードリーダーは払底し、システム導入も順番待ちでなかなか進まない。
 「各施設がそれに対応した機器を持たなければいけない」ことで起こる社会全体のコスト増を国は補助金で対応しようとしている。しかしこれは一時的な補助金で済む問題ではない。ハードウェアに依存したシステムは定期更新を必要とする。SDGsが言われる今、維持そのものに多くの資源が必要な行政システムについて考える必要がある。
 マイナカード義務化は今の政府方針としても、今後において、カードや読み込み端末に依存せず、場所にかかわらずに本人確認ができ、安全に各行政データが紐付けされた、本当の意味での「マイナンバーシステム」の実現こそ目指すべきである。

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