まん延防止措置が解除になるのを待ちわびて、22年4月4日から7泊の熊本・天草を旅してきました。目的は世界文化遺産の潜伏キリシタンの里の一つ、天草の崎津集落です。小さな漁村を守るように教会がすっと立っている姿をテレビの番組で何回か見て、ぜひここでスケッチがしたくなりました。
天草は南北に上天草と下天草とからなり、北側は島原湾に面し、天気が良く下天草の本渡から雲仙普賢岳と噴煙が見えました。一方、崎津は下天草の南西の端、辺鄙なところです。近くの牛深からは鹿児島県までフェリーで30分、下天草の人々の生活圏は熊本よりは長崎、鹿児島のように感じました。熊本出身の患者さんに聞いても、「崎津は以前一度行ったことがあり、ほっとするいいところでしたが、遠いですね」と言われます。
1日目は天草市直営の観光バスを利用。地元のガイドさんが“天草弁”で面白おかしく説明してくれます。まん延防止措置解除間もなくで乗客は少なく6人だけ、和気あいあいの観光です。バスが羊角湾に差し掛かると対岸の崎津の漁村と教会が姿をあらわします。久しく待っていた光景にみんな大歓声、シャッターバチバチ。「潜伏キリシタン」が世界文化遺産に登録されてからコロナ前までは、狭い崎津集落は芋の子を洗うような混雑ぶりだったそうですが、今はうそのよう。私たちのバス観光客のほかには、ほんのわずかの人にしか会いません。車もめったに通らず、狭い路地に入り、杉よう羹(平べったい、ピンクのすじの入った餡餅の上に杉の葉っぱを載せた、琉球王朝伝来の素朴なお菓子)を食べました。皆が集まってきて、店のおばさんもガイドさんもみんなでワイワイ、同窓会のようでした。見送られながら下田温泉で下車、ここに2泊しました。肌に柔らかな旅の疲れをいやしてくれる温泉でした。
翌日は独りレンタサイクルで崎津をまわり、あちこち路地をスケッチ、午後からは漁船をチャーターして船上から漁村と教会のたたずまいを眺めました。テレビで見た、漁の行き帰りに漁師さんが航行の安全と豊漁を祈願するというマリア像も近くで眺めることができました。スケッチもいっぱいできて、心の洗われるすがすがしい旅でした。本当に久しぶりの長旅でした。また方々遠くをふらつきたい!
「崎津集落(1)」(絵葉書スケッチブック)
「崎津集落(2)」(絵葉書スケッチブック)