安倍晋三元首相が、参議院選挙遊説中に銃撃され死亡した。我が国憲政史上、最長政権を担った人が、安全神話のあるこの日本国内で、しかも国政選挙の最中に、こんな形で生涯を終えるとは…▼安倍政権の功罪については、今後も歴史の中で種々論議がなされていくであろう。しかし、少なくとも、彼が強力に推し進めた「アベノミクス」という新自由主義が、人々の分断を生み、社会保障を減退させたことは事実である。政権運営中に指摘された数々の疑惑に対しても説明責任が果たされたとは言えず、真実の多くは深い闇に沈んだままである。とは言え、人の心は移ろうもの。健康問題を理由に退陣した安倍氏が天寿を全うしていたなら、その口から何らかの形で説明がなされることも、あながちありえないことではない。でも、その可能性はこの犯罪により永遠に奪い去られた▼人は喜怒哀楽の中で生きている。だが、いかに恨みの募る相手であろうと、このような手段を用いることは断じて許されない。その一方で、人と人とが殺し合い、より多くの人を殺した人が「英雄」と賞される戦争▼なぜ人類はこのような行為を繰り返すのか…。平和呆けした我が身にはどうしても理解できない。いや、理解したくもない。ささやかな抵抗を粘り強く続けていこう。
(呑鉄童)
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