施設留置問題で実情まざまざ 医療・福祉関係者集う  PDF

 新型コロナウイルス感染症第6波では、京都府内でも感染した高齢者・障害施設の入所者が施設に留め置かれたまま、医療につながることなく、命を落とす事態が発生した。これを受け、協会等5団体が呼びかけ、医療・福祉関係者が同じテーブルで話し合う「高齢者・障害者施設におけるコロナ患者留置問題を考えるミーティング」を6月18日にウェブで開催した。参加者は42人。主催は協会の他、社会福祉法人七野会、きょうされん京都支部、京都民主医療機関連合会、京都社会保障推進協議会。コメンテーターとして佛教大学の新井康友准教授が参加した。冒頭、主催団体を代表し、協会の礒部博子政策部員があいさつした。

「必要な入院」?の担保を
 基調報告では、協会が高齢者・障害者施設と新型コロナ患者受入病院を対象に行った「新型コロナ『第6波』における影響調査」(本紙第3122号既報)の結果を報告。続いて、直近の新型コロナウイルス感染症における京都府の確保病床や入院調整体制などを解説し、高齢者施設等の留置問題が浮上する中、府は新たに高齢者施設等への医療提供にかかる対応等を示したが、あくまで往診等の仕組みであることから、少なくとも「必要な入院」が確実にできるようにすべきだと締めくくった。
 基調報告を受け新井氏は、介護施設は生活の場であり、陽性患者の留置きが感染拡大につながるのは容易に想像できる。府は往診チームを圏域ごとに構築するというが、留置きが前提の話であり、入院できる体制、適切な治療が受けられる体制の構築が必要である。治療が受けられないというのは人権・生存権の侵害だと述べた。

各分野から悲痛な声が続々
 続いて各分野から報告があった。協会の増田道彦監事は「入院現場と救急現場から」を報告。京都府内の第6波の感染状況などを解説し、重症化率より死亡率の方が高かったのが第6波の特徴であるとした。また、自身の病院のコロナでの新入院患者数や救急患者受入数を示し、心肺停止で救急搬送された事例を紹介した。
 原谷こぶしの里の介山篤施設長と大島浩子部長は「特別養護老人ホームから」を報告。施設で起こった大規模クラスターの対応状況、京都市当局とのやり取りを語った。コロナに感染後、体調が急速に悪化する施設利用者に対し、必死に入院先を探したが力及ばず、目の前でただただ弱っていく利用者を見守るしかなかったと声を震わせた。
 あみの福祉会だるまハウスの管理者、梅田三木子氏は「障害のある人の事業所から」を報告。施設内のクラスター発生の詳細を述べ、行政にでき得る範囲で対応してもらったが、もっと早くに入院できていたら重症化も感染拡大も防げたのではないかと吐露。病気になっても医療にかかれない、入院できずに重症化する、クラスターが起こる。この国の社会保障の脆弱さが露呈してしまったのではないかと述べた。
 葵の郷の田波英五郎看護師長は「介護医療院から」を報告。介護医療院におけるクラスターの状況について説明。一度目は感染した利用者全員が入院したが、二度目は全員留置きとなったと報告した。介護医療院は生活施設としての側面と、他の介護施設では対応が難しい、吸引や経管栄養といった医療処置や医学管理の機能を併せ持っている。対応にあたるスタッフへの負担が重く、特に自身や家族への感染の懸念、先の見えない不安など心理的ストレスが大きかったとした。また、リハビリ等を休止したことで、利用者のADL低下、拘縮などが増えたと述べた。

すべての人に必要な医療の提供を
 各分野の報告を受け、参加者から「感染症対応は隔離だけでなく治療も必要」「死亡者を0にするのが国として当然追求すべき政策」「在宅で完結することは極めて難しく、救急隊を呼んでも、数時間搬送先を探した事例があった。『人工呼吸器を希望される人は無理だ』と言われたこともあり、残念ながら生命の選別は確かにあった」などの意見が出された。
 最後に、社会福祉法人七野会の井上ひろみ理事長が声明を読み上げ、参加者一同で確認した。

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