医師が選んだ医事紛争事例164  PDF

フロモックスR錠で薬疹

(50歳代後半男性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は急性咽頭炎症状で本件医療機関の耳鼻咽喉科を受診した。その際、患者は問診票に「セファロスポリン系セフゾンなどの薬アレルギーがある」と記載。しかし担当医が見落とし、フロモックスR錠100㎎、ムコダインR錠500㎎、トランサミンR錠250㎎(1日3錠毎食後分散で7日分)を処方した。患者は、院外の保険薬局で処方薬を受け取り、2回にわたり服用した。患者は服用同日から全身に痒みを感じ発赤が発現したため、本件医療機関の内科を受診したところ、フロモックスR錠の服用中止が指示され、ポララミンR錠等が処方された。患者は翌日を含め3日間、薬剤アレルギーで受診した。3日目の皮膚科受診では、背中・内腿に軽い痒みが残存するとともに躰幹、四肢に極淡い紅斑が確認された。
 患者側は過去にも他の医療機関で同様の誤投薬を2回経験しており、その際にも賠償してもらったとして、本件医療機関に対しても額は明確でないが、賠償を求めた。
 医療機関側は、誤投薬は全面的な過誤として患者に謝罪をした。
 紛争発生から解決まで約7カ月間要した。
〈問題点〉
 医師が問診票を確認しなかったことによる誤投薬であり、明らかな過誤と判断できよう。本件医療機関が使用している電子カルテでは、問診票で申告された禁忌薬の薬剤名や系統が禁忌薬欄として端末画面に常には表示されないプログラムであったなどの問題点もあり、禁忌薬が常にコンピュータの画面上に出される等、システム改善の必要性が感じられるケースであった。また、院外の保険薬局で、何故ダブルチェックが効かなかったのかが不明であった。医療機関側は賠償金額にもよるが、基本的にA薬局には賠償の分担をさせないとのことだった。
 薬剤アレルギーについては、どの範囲のセファロスポリン系抗生剤に過敏であるか、他にペニシリン系抗生剤との交叉免疫性の有無の問題もあり、対象の患者にアレルギー外来診療をすすめ、対処の検討を行う必要もあろう。
〈結果〉
 医療機関側が誠心誠意の謝罪をした結果、少額の賠償金を支払うことで示談した。なお、患者はA薬局には賠償請求しなかった。

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