検査の適応拡大や処置加点も改善余地あり
皮膚科 谷岡 未樹
今回の改定では、皮膚科領域に大きな増減はなかった。ただし、適応疾患の追加を代表例として細部では日常診療に反映できる改定点があった。
ダーモスコピー検査の適応疾患に円形脱毛症が追加された。これまで有効性は知られていたが保険適用がないため、円形脱毛症の診断や病勢把握に使用していたものの、点数は算定できなかった。臨床現場の必要性が認められた形であり、評価できる。
また、日光角化症に対してもダーモスコピー検査が認められた。日光角化症の早期診断に寄与すると思われる。
他の検査として白癬菌抗原検査が新規に認められた。真菌顕微鏡検査で真菌が同定されない難治例においても高い特異度/感受性を持って白癬菌の有無を診断できるようになった。ただし、算定要件の詳細については経過を見る必要がある。
増点された処置として、皮膚切開術がある。前回の改定から引き続き増点された。外来で外科的治療を行うことに対しての加点であり評価できる。
また、下肢創傷処置管理料と下肢創傷処置が新設された。ただ、管理料算定には届出が必要であり、処置点数の算定要件の詳細が定まっておらず経過を見る必要がある。
まとめると、今回の改定では日常診療の細かな点で、改善が見られたが、まだまだ改善の余地は残っている。今後も、日常診療にいかせる診療報酬改定が期待される。
報酬格差につながる改定に疑問
精神科 東前 隆司
今回は「質の高い精神医療の評価」という指標で改定が行われた。外来診療での大きな改定は通院・在宅精神療法の点数に精神保健指定医が行った場合とそれ以外で診療報酬上の格差がついたことである。
精神保健指定医は「精神医療における非自発的入院の判定を独占的に行える者」であり、簡易鑑定や措置入院をはじめ精神科の入院患者の半数近くを占める医療保護入院の判定にも関わる。入院患者の身体的拘束にもその資格が必要である。しかし通院・在宅精神療法は指定医であるかどうかで診療内容に差があるものではいささかもない。これは診療報酬格差をつける理由にはならない。些細なことのようであるが明言しておきたいところである。
児童思春期精神科専門管理加算が初診日から2年を超えて行った場合も評価されることになった。また「療養生活継続支援加算」やアルコール依存症の患者に対する「依存症集団療法」も新設された。精神疾患が増悪する恐れのある患者に対して、かかりつけ医と精神科の医師が連携して指導した場合に「こころの連携指導料」も新設された。いずれも算定要件が定められているので注意されたい。
病院には「精神科充実体制加算」や「急性期充実体制加算」が新設されたが、精神科救急医療体制整備の推進継続の意味があり、これまであったものに算定要件や施設基準を難易度の高いものにして加点するというものである。
リフィル処方箋は、投薬量に限度が定められている医薬品(麻薬・向精神薬、新薬、湿布等)は対象外であるため精神科では大きな影響を受けることはないと思われる。リフィル処方では診療報酬面で診療所などの医療機関に加点はない。調剤薬局には一定の要件が課せられるが報酬は確保できる仕組みである。病床400以上の病院では30日以上の処方で処方箋料が6割カットされるがリフィル処方の場合は適用されないためリフィルによる長期処方をする病院は増えると考えられている。
改定の話題からは外れるが、ジェネリック医薬品の不足は精神科領域でも大変困った問題となっている。何が起こるか予断を許さない世界になったものである。