外来機能分化と「かかりつけ医」制度化ともに7割が国の方針に反対 2021年度地区懇アンケート  PDF

 新型コロナウイルス感染症における病床ひっ迫で自宅療養者が増え、陽性者への往診も含めた地域の医療者の対応の在り方がクローズアップされた。そうした事態を受け、財政制度等審議会や一部野党からも「かかりつけ医制度」創設を求める声が上がっている。2021年5月に公布された「改正医療法」に基づき、22年4月から実施されている「外来機能報告制度」も、将来的にはそれを視野に入れたものとして導入された。こうした動きについて、21年10月から22年3月にかけて開催した地区医師会との懇談会において報告し、合わせて会員の意見を尋ねた。2225人のうち370人から回答(回答率17%)があった。

「外来機能報告」
ほとんどが知らない

 国が22年4月より、病床機能報告制度の外来版である「外来機能報告制度」を実施し、病院・有床診療所に報告を義務づける(無床診療所は任意)ことについては、「知らない」が87%、「知っている」11%であった(図1)。

7割が地域実情や主体性に委ねるべき

 外来機能報告は地域ごとに、①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来②高額等の医療機器・設備を必要とする外来③特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)を「医療資源を重点的に活用する外来」としてレセプトデータを用いて明らかにした上で、地域に「協議の場」を設け、「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化させるもの。国はこれを機能分化・連携を進めるために行うとしている。
 これをどう考えるかについて、最も多かったのは69%の「各病院の外来機能は、地域の実情や地域の医療者の主体性に委ねるべきであり、上から区分させることは望ましくない」であった。一方で、「地域の中で、各病院の外来機能が明確になり、患者の適切な受診につながるようになるため、必要である」も20%であった(図2)。

紹介状ない場合の定額負担拡大意見割れる

 国は、「大病院と中小病院・診療所の外来における機能分化を推進する観点から、紹介状がない患者の大病院外来の初診・再診時の定額負担制度を拡充する必要がある」として、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関」のうち、一般病床数200床以上の病院を定額負担制度の徴収義務に加えるとしている。
 これをどう考えるかについて、「地域によっては当該病院が唯一の外来である場合も考えられるなど、地域性のある話であり、一律に定額負担制度の徴収義務に加えるべきではない」が52%、「患者の大病院志向を解消し、病院スタッフの働き方改革に資するものであり、必要である」が30%、「フリーアクセス制限につながる政策を拡大すべきではないので反対である」が12%であった(図3)。

7割が「かかりつけ医」制度化に反対

 国は外来機能報告制度を通じ、将来的には無床診療所も含めた外来を「医療資源を重点的に活用する外来」と「かかりつけ医」に区分し、かかりつけ医の紹介のない入院や専門科受診を制限すること。「かかりつけ医」に患者を登録し、人数分の報酬を包括払いすること等、「かかりつけ医制度」の創設を検討しているものとみられる。
 こうした改革の方向をどう考えるかについて、「日本の開業医は専門性を持ちつつ、プライマリケアを担ってきた。患者の受診行動もそれを前提として国民皆保険制度は成り立っており、そのような改革は行うべきではない」が72%と最も多かった。「医療費抑制に向け、無駄な受診を減らすためにはそうした改革は必要である」は16%にとどまった(図4)。

会員の声を踏まえ提言へ

 会員の意見の多くは、地域の実情を考慮せず、上から押し付ける外来機能の分化や「かかりつけ医」の制度化には抵抗が示されている。こうした会員の声を受け、協会は、「かかりつけ医」機能は必要だが、制度化には反対との立場で提言とりまとめを行っている。

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