文化企画 ファゴットの妙技に感嘆  PDF

 協会は、新型コロナの対策を実施した上で、サロンコンサートを4月23日に開催。参加者は8人となった。以下、参加記を掲載する。

サロンコンサートに参加して
阿部 純(宇治久世)

 コロナの収束見通せず、さらにロシアのウクライナへの軍事侵攻も重なった中で、4月23日のサロンコンサートにこぎつけていただいた京都府保険医協会の皆様、そして4人の演奏家の方にまずは感謝申し上げたい。
 今回は、ホテルモントレ京都の会場“エスカーレ”に聴衆5人と保険医協会3人の計8人の少人数の参加者であった。コロナ時代の反映なのかとも思ったが、聴衆する側にとってはモントレの会場の構造やデザイン性も合わせメリットが大きかったのではないかと。ただ少し、経済面で心配な点もあった。
 パンフレットを手に取ると“ファゴットと弦楽三重奏で名曲を楽しむ”と題され、小品5演目とトリのファゴット協奏曲で締めるという計1時間の演奏であり、今回の主役は何といってもファゴットであった。
 ファゴットは個人的にもなじみが薄い楽器ではあったが、オーケストラの中で何だかおどけたような、狂言まわしのような独特の音色で不思議な存在感を放っているようだ。駆けつけていただいたファゴット奏者は京響首席奏者の中野陽一朗さんで、サロンコンサートには実に13年ぶりの登場らしい。バイオリン、ビオラ、チェロ、ファゴットと揃ったところで演奏開始であったが、最初のハイドンのセレナードに接して、これは個人的な思い出になることをお許し願いたいが、約40年前に同級生の結婚式のお祝いに私が演奏した曲であったのだ。それが今回はビオラのピチカートで支えられながら、ファゴットの大人の魅力をたっぷりと聴かせていただき、当然のことながら全く新しい曲に変貌したように感じられた。いつものように1曲演奏が終わるごとにビオラの金本さんがユーモアを交えながら明快な解説をしてくれたが、今回は楽屋裏のエピソードも披露してくれ演奏していただき、奏者との心理的距離が近づいたようだった。たぐいまれな集中力を持続しなくてはならない奏者に人間的な面を垣間見たようだった。
 さて、3曲目のベートーヴェンの弦楽三重奏とは珍しい選曲であったが、やはり他の作曲家とは違う内容の濃さと重厚感を聴き、これって三重奏?もっと多くの楽器で演奏しているのでは?と。お聴きしたのは1、2楽章だけだったが、6楽章まであるらしい。私にはもうこれだけでもお腹一杯のようだった。
 最後のモーツァルトのファゴット協奏曲は、何といっても中野さん、やおら立ち上がってのカデンツァにブラボー(と心の中で)。上昇と下降を3オクターブで繰り返す飛躍力に脱帽、でもすごい練習量ではないかと思い至った。選曲や趣向の見事さもあり1時間という短い時間とは思えない充実感があり、こんな贅沢な時間をもっと多くの方に享受していただきたいと強く思った。来年こそは演奏後の語らいも期待したいな。

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