今般のロシア軍によるウクライナ侵攻で特徴的なのは、軍事施設にとどまらず病院、学校などの民間施設や一般市民が攻撃の対象となり、ジェノサイド(集団殺害)の様相を呈していることである。我々は従来、生存権、自由権などの基本的人権を当然の権利とみなしてきたが、ロシアではこの点で我々とは異なる価値観が採用されているようだ。ロシアの権力者にとっては人の命の重さは我々が考えるほど重くはないのかもしれない。そしてそのことを承知しているロシアの指導者は、核兵器使用をほのめかしたとき、西側陣営は生命を重要視するあまり、参戦してこないだろうと考えたのかもしれない。
この軍事侵攻で我々がとるべき対応にはどのようなものがあるだろうか。
まず2月28日、保団連会長名で素早く抗議声明がマスコミ各社に発出された。京都府保険医協会も3月2日付で駐日ロシア大使館あてに抗議談話を送付した。
またコロナ禍で多くの人が苦しんでいる最中の軍事行動はコロナ対応を含めた医療現場に、さらなる混乱をもたらす。物流の停滞や価格変動は医薬材料等の供給不足を招きかねず、実際シリコンカテーテルや歯科領域で使われる金属パラジウムの仕入価格は高騰している。今後の行方を注視する必要がある。
さらに軍事行動の影響でサイバーテロが広がり、医療機関においてもサイバーセキュリティー対策がより急務となった。サイバーセキュリティーに関してはすでに厚労省がガイドラインを策定しているが、今後オンライン診療等で外部の環境につながるケースが増えると、急速にリスクが顕在化する可能性がある。
このような中、国民の年金資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国際法で禁じられている兵器「クラスター弾」の製造企業の株式を保有していることが明らかとなった。クラスター弾はその非人道性から2010年に禁止条約が発効、日本も署名している。ロシア軍がクラスター弾を使用しているとされる中、協会はクラスター弾および核兵器製造企業への投資を止めることを求める要請書を同法人とそれを管轄する厚生労働大臣宛に4月14日、送付した。
これらの問題に関しては今後も適時的確に対応してゆく所存である。
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