2022年度改定の答申受け―理事長談話(2月10日)  PDF

受診時定額負担の拡大と診療報酬からの負担相当分の減額は
法の目を掻い潜った「療養の給付」の引き下げであり許せない
2022年10月実施は断固阻止すべきである

 中医協は2月9日、22年度診療報酬改定について答申した。
 その中で、紹介状なしで病院を受診する場合の定額負担、いわゆる受診時定額負担の医療機関の対象範囲を拡大し、①対象病院を22年4月から始まる「外来機能報告」制度における「紹介受診重点医療機関(医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関)」のうち一般病床200床以上の病院に拡大すること②初診時2000円、再診時500円以上の定額負担を強制的に保険外併用療養費として追加徴収するとともに、保険給付(診療報酬)の範囲から200点、50点を減額する仕組みを、22年10月から実施するとした。
 これは、全世代型社会保障改革の方針(20年12月15日閣議決定)や20年12月23日の社会保障審議会医療保険部会の議論を踏まえた検討と考えるが、この負担増にあたって健保法等を「改正」した節は見当たらない。
 16年度改定で導入された同制度の負担額を増額するとともに、紹介率減算、妥結率減算のように初・再診料を減額する仕組みとなる。
 しかし、どのような理屈を捏ねようがこれは明らかに患者負担増である。本来は健康保険法等の「改定」が必要なものであり、この制度変更だけをもってして国民に周知した上で国会に法案を提出して十分に審議すべき重大な制度変更である。このような制度改悪を国民の理解も得ずに実施することは、法治国家として絶対に行ってはならない。
 国民が社会保障を受ける権利の、国家による一方的な剥奪の企みと言うべき暴挙である。
 02年10月、小泉内閣による健保法「改正」で、社保本人の入院・入院外、社保家族の入院時の一部負担金を3割に引き上げた際、附則第2条で医療保険各法に規定する被保険者および被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり100分の70を維持するものとする」と政府は国民に約束している。今回の受診時定額負担の拡大および初診料、外来診療料の減額は、この約束を実質的に反故にするものであり、いわば「騙し討ち」だ。
 一方、政府・財界・財務省・厚労省は医療費抑制・削減のターゲットを一部負担金の引き上げから医療提供体制の縮小・再編に替え、地域医療構想による病床機能の分化・強化、公立病院の再編・統廃合、一般病棟の「重症度、医療・看護必要度」の強化による急性期病床削減、療養病床の介護医療院への転換など、入院医療費の抑制を図ってきた。
 22年4月に実施される「外来機能報告」制度では、外来機能の分化、「かかりつけ医」機能の強化が狙われており、その先にはフリーアクセスの制限がターゲットになっている。
 つまり、今回の受診時定額負担の拡大および初診料、外来診療料の逓減を導入させては、入院外の医療において、「かかりつけ医」以外の医師に受診した場合に一律に一定の負担を求めるという「ワンコイン負担」の導入の下地を作ってしまう。
 そのため、我々はこの22年10月実施を断固阻止すべく運動しなければならない。
 保団連と協同し、国民・患者へ広く訴える等して、この負担増の不当性、危険性を訴えかけていく必要があると考える。

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