そこのところが知りたかった!医療安全Q&A vol4 弁護士が対応方法をお答えします  PDF

手術同意書(インフォームドコンセント)

あやめ法律事務所 江頭 節子 弁護士

 Q、開業医が行うような簡便な手術であっても、必ず同意書は取らなければいけませんか。患者から同意書を取っていなかったことで医療機関に不利になることがありますか。
 A、後日のトラブルを避け、医療機関を守るために、同意書を取っておいた方がよいです。
 手術は簡便であっても身体を侵襲しますので、合併症、手術痕等の不具合事象やリスクがあります。患者さんは、手術のメリット(治療効果)とデメリットを比較して、メリットの方が大きいと判断した場合に手術を受けます。患者さんのこの選択権を保障するため、医療機関は手術のメリットとデメリットについて患者さんが判断するための材料(情報)を提供しなければなりません(「説明義務」)。
 例えば手術後に合併症が発生し、それがやむを得ないもので医療過誤と言えない場合であっても、「そんな合併症があると説明を受けていれば、手術は受けなかったのに。自己決定権を侵害された」と主張され、手術の過誤についてではなく説明義務違反について慰謝料を払わされることがあります。ですので、必要な説明をした上で同意書に署名をもらっておくことはとても重要です。
 このように同意書は必要な説明をしたことの証拠ですので、説明内容も書面にして患者さんに渡し、渡した記録を残しましょう。説明内容が簡単なら同意書と一体でよいですが(コピーを患者さんに渡す)、説明が長ければ説明書と同意書を別にしてもよいでしょう。
 手術の適応、メリット、デメリット(重大な後遺症等はその発生割合も)、手順、術前術後の注意等を書いた説明書を見せながら重要なところは下線を引くなどして口頭説明した上で渡します。予定手術の場合は、説明書と同意書を持ち帰っていただき、手術当日に同意書を持参してもらうのが好ましいです。「いきなり紙を渡されてサインしてと言われたからしただけ」と言わることがよくあります。患者さんが家でゆっくり読んで検討できるよう事前に渡し、そのことを記録化しておくことで、患者さんと医療機関の双方を守ることになります。
 また、同意書を取ることを失念したら、気付いた時点で今後の考えられる不利益事象を説明しましょう。「こういう症状が出れば合併症の可能性があるからすぐに受診するように」等。すでに不利益事象が発生していて、「事前に聞いていれば手術を受けなかったのに」と言われたら、素直にお詫びした方が結局はトラブルを大きくしないでしょう。
 医療機関は料金の事前説明をしない傾向がありますが、他の業界では事前に料金を示すのは常識です。苦情防止のため、料金の目安も事前に説明した方がよいでしょう。

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