憲法を考えるために 67  PDF

憲法第1章

 そのときどきの憲法に関する関心事を書いてきたこのコラムも回を重ねましたが、当初から頭にありながら書かなかった(問題の広さ、深さから書けなかった)一つが第1章「天皇」です。
 第1条「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」
 象徴(symbol)とは、抽象的なものをより具体的なイメージを持ちやすい別のもので表すことだそうですが、明治憲法下では天皇は主権者であり、統治権者であり、日本の象徴の機能をも持っていたものから、現憲法下では、主権は国民に、立法権は議会に、行政権は内閣に、司法権は裁判所に移り、軍事の権限は消滅し、天皇には象徴だけが残りました。天皇を見るとみんなが日本のことを思い出す、それが象徴と習った記憶があります。
 この象徴天皇制について、曖昧な形ではあっても、政治と関わってはならないという認識は広く共有されているように思います。第4条「天皇はこの憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない」。その上で第7条「天皇の国事行為」で天皇は内閣の助言と承認により、国民のために国事に関する行為を行うとし、「国会を召集すること」など10項を列挙しています。10項目の内容は後述の通りです。①憲法改正、法律、政令および条約を公布すること②国会を召集すること③衆議院を解散すること④国会議員の総選挙の施行を公示すること⑤国務大臣および法律の定めるその他の官吏の任免ならびに全権委任状および大使および公使の信任状を認証すること⑥大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を認証すること⑦栄典を授与すること⑧批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること⑨外国の大使および公使を接受すること⑩儀式を行うこと―。
 その①~⑧については、実質的に決めるのは日本の他の国家機関であることに疑問の余地はありません。しかし、⑨外国の大使および公使を接受すること⑩儀式を行うことは、一見非政治的に見えますが、その行為の政治的効果は千差万別と言わざるを得ません。
 終わりに、少し話は飛びますが、皇室の人権について。天皇にも人権はあるがその地位の特殊性からやむおえず制限を受けるとされています。選挙権、表現の自由、信教の自由、居住・移転の自由など憲法で保障される権利はすべて制限されてしまうようです。
(政策部会・飯田哲夫)

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