デジタル庁が9月1日に発足した。各省庁を統率する司令塔として、行政のオンライン化をはじめとしたデジタル改革を推進する。行政手続きがオンラインで可能になっていれば、昨年の特別給付金は、給付に際しての外注費と人件費1500億円の費用が削減できただろうし、何よりも効率的に配布できたはずである。また、新型コロナ感染者数や病床使用率の把握、ワクチンの接種人数やワクチンの配布などについても、速やかに情報共有し、もっと効率的に対応できたかもしれない。
デジタル化の利点は理解しつつも、一方で過去の消えた年金問題のように、そもそも情報管理が杜撰であったことを思い出すと、政府はデジタル庁発足にあたり、過去の反省と対策を発表する義務がある。新型コロナ感染症対策でさえ各国の手法を参考にしていない政府が、デジタル先進国の状況やサイバー攻撃の情報を収集し、日本の社会にあった形で利用していけるのかどうか、危機管理を含めて注視する必要がある。
社会保険診療報酬支払基金が発表した、2020年3月診療分でのオンライン請求医療機関数は、病院で98%、診療所では68・2%であったが、京都においては、オンライン48・6%、電子媒体43・9%、紙レセプト7・3%と他の都道府県に比べてオンライン請求の比率が低い。デジタル機器の扱いが不得手であるとか、情報漏えいが心配でオンライン体制を整えない、高齢など理由はさまざまと推察するが、デジタル弱者が取り残されることがないように、配慮してほしい。
オンライン請求の利用率が低い背景には、やはり情報漏えいなどのプライバシーの侵害への懸念が根強いのではないだろうか。デジタル庁創設に合わせて個人情報保護法の改定が行われる。条例などで厳格な運用を定めてきた自治体にとっては、緩いルールとなる恐れもあるようだ。サイバー攻撃などによる個人情報漏えいも相次ぐ中、大手銀行が何度もサイバー攻撃を受けて業務が停止する事例では、事業に直結する被害ばかりでなく、風評被害が起こることも想定される。サイバーセキュリティーの確保は、経営者の責任である。それは医療機関でも例外ではない。
協会では、医師賠償責任保険に加入の医療機関を対象に、個人情報漏えい保険や医療機関用のサイバー保険も取り扱っている。この機会に自院のサイバー対策も見直していただきたい。
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