国内における新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大から1年半を経過しようとしている。当初より長期戦を覚悟する必要があるとの指摘はあったが、それを見越した対策が効果的に行われてきたとは言い難い。
初期の医療現場は特にパンデミックに関わる医療資源の枯渇が叫ばれながら、厚労省の方針により平時に特化した体制のまま、身動きが取れなかった。また当初、海外からのコロナ流入の抑制にかかわる入国者管理が極めて不完全であった結果、昨冬の第3波の収まり切らないなかでの変異ウイルス感染による第4波が、感染拡大地域で必要な医療を提供できない事態をもたらした。
コロナ患者受け入れの有無を問わず、医療機関における収入減少も甚だしい。
現状で最も効果の高い対策であるワクチン接種は、集団接種拡大を求める声が現場からあったにもかかわらず、京都市は個別接種中心で開始し、高齢者接種も遅延したうえに、職域接種増加とともにワクチンの供給不足におちいり、今後の見通しも不確かである。
昨年の総会以来コロナに国民生活が翻弄される中、重要な立法措置がみられた。
5月21日成立の医療法等の一部改正では、医療提供体制について、従来通りの医師数抑制方針が継続された。現状のコロナ対応から明らかになった、緊急時にも対応を可能にする医療資源の確保と維持という課題は放置された。6月4日に成立した医療制度改革関連法は、後期高齢者の窓口2割負担を導入する。持続可能な社会保障制度構築を目指した改革と称するが、受診抑制がむしろ各種疾患の悪化と結果としての医療費増大を呼ぶだろう。平和な国民生活に立脚するよりよい保険医療を目指す保険医協会としては、憂慮すべき事態である。
日本の皆保険制度の機能を強化し、今後も続くであろうコロナ感染対策にも対応できる医療提供体制の構築を目指すべき時であり、その実現に向けて以下を決議する。
一、全ての保険医療機関に対し、新型コロナウイルス感染症拡大によって生じた減収分を全額補填すると共に、院内感染防止のための医療資機材の支給及び対策のための財政措置を講ずること。
一、常に急激な医療需要の拡大に対応できる体制を準備しておくためにも、従来からの医師数抑制等の方針を見直し、在宅医療も含めて普段から人員配置に余裕のある医療提供体制を構築すること。
一、人や技術に関する点数を評価した診療報酬体系とし、入院料、初診・再診料などの基本診療料の引き上げを中心に医療費総額を引き上げること。
一、国民皆保険制度を堅持し発展させるため、社会保障財源の安定とその基礎になる社会・経済活動の活性化と産業や諸事業の活発化につとめること。
一、緊急時での遅滞ない現場での対策を可能とするために、国は平時から自治体の裁量を重んじること。
2021年8月1日
京都府保険医協会
第74回定期総会
(第201回定時代議員会合併)