北陸新幹線延伸工事と京都の環境悪化
以前にこのコラムで危惧を伝えていた(本紙第3004号掲載)北陸新幹線大阪延伸工事による悪影響ですが、小浜ルート→京都盆地縦断という京都府の環境を考えると最悪と思われるコースに決定されてしまいました。
詳細なコースは未定ですが、小浜市の東より複数の長大トンネルを穿ち、おそらく京都市内は堀川通に沿い大深度地下を南下、京都駅西側地下に新駅を設置、さらにリニア新幹線の駅も噂されている松井山手付近を経由して大阪に至ることが有力視されています。
現在の計画では大阪延伸完了は2045年程度が想定されており、リニア新幹線の開通の方が早期になる可能性もあります。よって富士山噴火や南海トラフ大地震など災害時の首都圏と京阪神圏の二重化の意義も乏しいでしょう。
滋賀県民にとっては駅はなく、現行法では湖西線が並行在来線になるためデメリットのみを押し付けられることとなります。福井・石川県民にも23~24年の敦賀延伸以後は、在来線特急のサンダーバードやしらさぎがなくなることが予想され、首都圏以外の京阪神や中京圏への移動が面倒になってしまいます(高齢者にとって乗り換えは苦痛)。
当然、工事に伴う物資輸送のための林道開削・森林伐採・掘削残土処理・地下水への影響などにより、京都北山の自然環境が荒らされてしまうのが必至の状況です。京都盆地縦断コースになったため、市街地の環境への影響も多大なものとなるでしょう。
古くは頼山陽に「山紫水明」と称され、前世紀には「北山からヒマラヤへ」と今西錦司・桑原武夫両先生等、多くの文化人が愛し、現在も京都一周トレールと称した、自然と文化が融合した散歩道が一般庶民にも親しまれています。
このような古都近傍の望ましい自然環境は、後世に残し伝えていかねばなりません。それは環境対策委員として、また京都岳人の一人としての務めと思っています。
(環境対策委員長・武田 信英)