「除染マネー」の闇
2021年は、東日本大震災から10年。いろいろな角度で「復興」について論じられています。
特に福島第一原発の事故からの復興は、当初語られていた復興夢物語からかけ離れたブラックな側面が、いろいろと明らかになりつつあります。広大な地域の放射線物質を取り除く「除染」、これは5・6兆円もの国民の税金や電気料金の一部が投入される国家的事業です。「除染」については、当初から小出裕章氏は「除染」は汚染物を移動させる「移染」にしか過ぎない、と発言されていましたが、それだけではなくこれは多額の利権を産み、さらにそれに群がる新たな「ムラ」を作り出す事業だったのです。
除染事業を落札する業者は高級時計、車、高額飲食接待を用い次々と事業を手にし、考えられないような高収益を上げていきます。一方、帰還を目指す汚染地域の元住民の住居周囲には、その作業は行われない現実があります。
本来責任を負うべき国や東電はその負担を次世代の国民に丸ごと負わせようとしています。しかも、現在中間貯蔵施設に大量に運び込まれた廃棄物の行き先は未定ですし、どう考えてもその行き先がこの狭い日本のどこかにあるとも思えません。
自然災害の多いこの国に災害が起こるたびに「復興バブル」が起き、いつの間にか膨れ上がった「復興マネー」に蟻のようにブラックな人間が吸い寄せられていくこの景色は、必要のないダム建設や、辺野古の海の埋め立てと重なるこの国の醜い風景を見せつけられる思いでいっぱいになりました。
(京都府歯科保険医協会 副理事長 平田高士)