ヘイトスピーチ
ヘイトスピーチ hate speech 憎悪表現[人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、容姿、健康、障害といった、自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて、個人または個人が属する集団に対して攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動](Wikipedia)。
「新型コロナウイルスの感染者やその家族の方などに対する差別・偏見は、その標的とされた人たちの人格を傷付けるものであって決して許されないものであるのは当然のことです。このような行為は、差別・偏見の標的とされた人たちに及ぼす被害を超えて、社会全体に悪い影響をもたらすものでもあります。これは、ヘイトスピーチについても同様です。自分と異なる属性を有する人たちを排斥しようとする差別意識は、『個人の尊厳』を掲げる日本国憲法の理念とも相反するものです」(法務省人権擁護局)。
グテーレス国連事務総長は、20年5月に公表された国連の「ヘイトスピーチに関する戦略と行動計画」の前文で、「ヘイトスピーチは民主主義の価値、社会の安定と平和に対する脅威である」と指摘しており、やはりヘイトスピーチが社会全体を脅かす問題であると位置付けた。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地でヘイトスピーチが広がった。あからさまに相手を誹謗中傷する悪質なものが少なくなかったが、現行の体制でそうした行為をなくすのは容易ではない。禁止規定や罰則がないため当初から実効性が疑問視されたヘイトスピーチ解消法の課題もあらためて露呈する形になったと指摘する報道もある。
コロナ感染の拡大、長期化に伴って、感染者、その家族、その近隣の住民、そして医療・看護・介護などに関わるものたちへの差別、排除などの問題も拡大し、我々の社会が抱えるさまざまな問題が浮き彫りになりつつある。その一つとして、「表現の自由とヘイトスピーチ」などに対する表現の制限を、次回取り上げたい。
(政策部会・飯田哲夫)