主張 コロナの先にある 慢性疾患増悪対策が急務  PDF

新型コロナウイルス感染流行の第3波がひとまず落ち着いているこの時期にこそ考えておきたいこと、それは「コロナが収まった後」の対策、なかんずく医療職である我々が見据えるべきは新型コロナウイルス感染収束のまさしくその先の臨床的観点である。
その先の臨床的観点とは、いわゆる「ポストコロナ」と名づけられている社会的着目点ではなく、コロナ禍に翻弄された人々が、ウイルス感染から免れたにもかかわらず、近い将来種々の医学的ハンディキャップに見舞われる可能性に思いを致すことである。
その代表的例として、糖尿病・高血圧・脂質異常症をはじめとした「生活習慣病」に罹患中の人々の行動の制限と止むを得ない受診の手控え、その結果としての諸般の増悪経過である。この点は今後も一定程度の「行動様式の変更」を長期にわたり続けていくことを余儀なくされることから、大きな危惧として忘れてはならない点である。
さらには、一時期激減したと報告のあった小児科の受診控えと小児期ワクチン接種の遅滞という問題点だ。その実態は今後徐々に明らかになってくるものと思われるが、影響が後世に及ぶ可能性も否定できない。
また、からくも感染せずに乗り越えることのできた若年および壮年期の人々も、今般被った精神的肉体的影響がいわゆる「コロナ禍後遺症」となって今後表面化することは想像に難くないところである。
忘れてはならないのが、高齢者を取り巻く種々の悪環境である。これまで積極的に社会と接点を持っていた高齢者が、やむなくそれらを自粛もしくは放棄せざるを得ない状況となっている事例は、まさに枚挙に暇がない。それどころか日常茶飯事とさえ言えるのではないか。ゲートボールに勤しんでいた人が、旅行好きで度々出かけていた人が、ボランティアとして社会活動に奉仕していた人が、等々…状況はさまざまであるが、ごく近い将来甚大な結果がもたらされたとしても驚くにあたらない。
そして、これらの悪影響は、当然ながら我々医療人自身にも及び、他人事として片づけられるものではない。まさしく全国民的課題と考えるべきであろう。
第4波の襲来懸念も間近にあり得る上、ワクチン供給の見通しが立たないなど、まだまだ「克服」の文字が遠いことは承知している。しかし、遠い先を見越し、早めに対策を積み上げておくことも必要に思われてならないのである。

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