次世代医療基盤法 匿名加工情報作成事業者と懇談 丁寧な患者同意の必要性を指摘  PDF

 協会は20年11月5日、医療情報に係る認定匿名加工情報作成事業者である一般社団法人ライフデータイニシアティブ(LDI)と懇談した。協会から鈴木理事長および事務局2人が出席。LDIからは代表理事・吉原博幸氏(京都大学名誉教授)、事務局長・稲垣稔之氏、麻生翔太氏の3人が出席した。
 18年5月、次世代医療基盤法が施行された。オプトアウト方式(医療機関において書面を配布する)により、あらかじめ通知を受けたとみなされる患者が停止を求めない限り、a)医療機関等から認定事業者へ要配慮個人情報である医療情報を提供することが可能、b)認定事業者から利活用者へ匿名加工医療情報を提供することが可能となった。
 協会は20年度方針の中で「複数の医療情報システム(個人特定につながる医療情報第三者提供システム)については、患者の個人情報を最大限守る立場から、できるだけオプトイン方式(本人が理解の上同意する。その場合は全く問題はない)で参加してもらう取り扱いを最大限追及する」と掲げている。
 今回の面談は方針に基づき、20年3月に日本初の次世代医療基盤法に基づく認定匿名加工情報作成事業者の認定を受けたLDIに要望書を提出、面談を求めていたところ、LDIがこれに応じて実現した。
 協会からの質問・要望は主に(1)個人情報の漏洩に関する各段階でのセキュリティー対策、業務委託事業者との契約においての責任分掌等について教えてほしい(2)オプトアウト方式ではなくオプトイン方式による本人同意の下でのデータ収集とすべきではないか―の2点。
 (1)について、LDIから図が示された。
 LDIの場合、EHR(電子健康記録、Electronic Health Record)収集事業を行うNPO法人日本医療ネットワーク協会(JMNA)と連携している。医療機関の承認を得てJMNAから医療情報の提供を受けたLDIは、認定医療情報等取扱受託事業者であるNTTデータに業務委託し、医療情報の二次利用を可能にしている。
 各段階におけるセキュリティー対策については、内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省が18年5月にまとめた「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律についてのガイドライン」(認定事業者、安全管理措置、匿名加工医療情報、医療情報の提供―の四つの段階におけるガイドライン)の資料提供を受けた。
 (2)については、意見交換は平行線を辿った。LDIは、①厚労省の保有するデータはレセプトデータであり疾病になってからの情報しか集められないし結果も集められない②オプトイン方式では全体の5%程度しかデータが集まらず、多くの情報を集めないと臨床研究において海外に後れを取ることにつながる③改正個人情報保護法により臨床研究が壊滅したことを受けて次世代医療基盤法が制定された④次世代医療基盤法に則って実施していきたい―等の説明があった。
 一方、協会は、①臨床研究を進めることは賛成している②問題はオプトアウト方式であること③ベースは個人情報保護法なので、オプトイン方式とすべきで患者がしっかり制度を理解して同意することが必要④運用面でもっと丁寧な方法をとるべきではないか―等を主張した。
 これに対してLDIは以下のように主張した。次世代医療基盤法は個人情報保護法の特別法であり、同意取得方法であるオプトアウト方式についても、国会で議論を重ねて決定された内容である。法に関することは、国会で再度議論するよう働きかけるべき(法で定められており、LDIはオプトイン方式を医療機関に求める立場にない)。参加している某病院では当初院内ポスターを掲示するとともに、チラシを個々の患者に配布していたが、負担が大きいため、窓口に積み置き、自由に持って帰ってもらう方法に変更した。利用開始後であっても患者から利用を止めてほしいという申し出があった場合は以降削除するが、申し出はあまりないのが現状だ。
 協会からは改めて患者の同意の必要性を主張するとともに、今後も意見交換できる場を持ちたい旨を伝えて懇談を終えた。

図 千年カルテ事業における個人情報保護法と次世代医療基盤法の法的範囲

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