厚生労働省の医療計画の見直し等に関する検討会が12月15日、「新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制の構築に向けた考え方」をまとめた。その柱は二つ。一つが「新興感染症等の感染拡大時における体制確保」を医療計画の記載事項に追加すること。もう一つが地域医療構想の今後の進め方だ。
医療法に基づく医療計画には、5疾病・5事業および在宅医療に関する医療連携体制構築等に向けた取組みが位置づけられているが、ここに6事業目として「新興感染症等の感染拡大時における医療」を追加して、次の第8次医療計画(2024年度~29年度)から盛り込もうというもの。新興感染症等の感染拡大時には、広く一般の医療提供体制にも大きな影響があり、機動的に対策を講じられるよう、基本的な事項について、あらかじめ地域の行政・医療関係者の間で議論・準備を行う必要があるとした。具体的には、「平時からの取組」として、感染拡大に対応可能な医療機関・病床等の確保や専門人材の確保等、「感染拡大時の取組」として、受入候補医療機関の確保、場所・人材等の確保に向けた考え方、医療機関の間での連携・役割分担等を挙げた。しかし、それをどう担保していくのかについては何ら示されてはいない。
地域医療構想の今後の進め方については、新型コロナ対応が続く中ではあるが、地域医療構想の背景となる中長期的な状況や見通しは変わっていないとして、基本的枠組みを維持しつつ、引き続き着実に取り組みを進めていくこととしている。
地域医療構想の実現に向け厚労省は19年9月、「診療実績が特に少ない」「類似かつ近接」に該当する424の公立・公的病院再編統合再検証リストを公表した。地域の実情を顧みない強引な手法と批判を浴びたが、厚労省は20年1月に通知で、秋までに再編統合を行うとし、対象病院も約440とした。新型コロナの蔓延により8月の通知では「改めて整理して示す」としていた。
一方で、「骨太方針19」において、民間には担えない機能へ重点化する医療機能の再編、病床数等の適正化に沿ったものとなるよう、国が助言や集中的な支援を行う「重点支援区域」を設定。20年1月と8月の2回、計12区域が指定されている。この重点支援区域は都道府県からの申請を踏まえ、厚労省が選定することとなっているが、コロナ禍においても着実に進める姿勢があらわれている。
コロナ禍で逼迫する地域医療を支えているのが公立・公的病院であり、再編リスト424病院のうち119病院が20年9月末時点でコロナ患者入院実績(11月17日、参院厚生労働委員会)がある。入院受入を構想区域の人口別にみると100万人以上でこそ民間が半数近いが、人口規模が少なくなるほど公立・公的の割合が高くなるとのデータも示されている(10月21日、地域医療構想に関するWG資料)。
「考え方」の報告を受けた社会保障審議会・医療部会(12月25日)でも、委員からは懸命に病床を確保しようとしている病院に再編整理の話をすべきではないと、「立ち止まってほしい」(平井鳥取県知事)との意見もあがっている。公立・公的病院の再編議論は、いったん白紙に戻してコロナ後を見据えて議論し直すべきときであろう。
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