偏在対策と難病で意見交換 府民クラブ京都府議会議員団と懇談  PDF

 協会は、府民クラブ京都府議会議員団との懇談会を11月6日に開催。議員団からは、酒井常雄団長、田中健志政調会長、岡本和德・田中美貴子・北川剛司・小原舞・堤淳太・山本篤志・梶原英樹議員が出席。懇談の実現に向けては平井斉己代表幹事にご尽力いただいた。協会からは、飯田・吉中理事と小泉政策部員が出席した。

 懇談では①国のすすめる医師偏在対策に対して危惧すること②難病医療費助成制度をめぐる状況について―の二つを協会から話題提供し、それに基づいて意見を交換した。
 協会は①について国が改正医療法・医師法で導入した医師偏在指標や医師確保計画が、地域に必要な医師を確保するのではなく、国による医師の管理・コントロールに用いられる危惧を指摘した。
 ②では、指定難病患者の重症度分類基準の廃止、「登録者証」制度の創設、「臨床調査個人票」作成費用の公費負担化、すべての難病の指定難病化―の四つの具体的要望を説明した。
 冒頭、飯田理事があいさつ。続いて議員団の酒井団長から「協会は保険による良い医療と医業の二つの柱で活動され、医療側だけではなく、患者さんの立場にも立ったさまざまな提言等をされていると聞いている。先日は、厚労省から公立・公的病院の再編・統合について京都府でも4病院を含む唐突な公表があった。みなさまからの声をいただき、現場での活動につなげていきたい」とあいさつした。

府議会でもシーリングに危惧の声

 府議団からは、副知事が議会で、厚労省の一方的な公表、専門医シーリング等、協会の言葉を使えば中央統制的だとコメントしたことを紹介。その上で、こうした厚労省の動きはここ最近の傾向なのかとの発言があった。
 これに対し協会は、厚労省としては2000年代の医療崩壊があり、医学部に地域枠が設けられ、医師数を確保した。塩崎厚労大臣時代に偏在是正が謳われるようになった。背景にアベノミクスがあり、医療費抑制を至上命題に医師数・病床数抑制が進められることになっている。
 しかし、本当に医師は足りるのかを考えねばならない。医学部の1県1大構想時代に医師になった人は今後減少していく。さらに正しくない人口推計や地域に潜在する医療需要を汲まない指標等、問題が多い。いずれ京都府の医師を他府県のために剥ぎ取るという話にさえなりかねない。日本の医師数はOECD諸国中で最低水準である。一方で日本よりもはるかに医師の多いドイツが、さらに医師を増やそうとしている。政策の方向がおかしいと述べた。
 これに対し府議団から、ドイツは今、医師を増やそうとしていると聞いた。国のいうように医師が多ければ医療費が高いのなら、ドイツの医療費は高いのか。またなぜ、ドイツは医師を増やそうとしているのか、と質問があった。
 協会は、ドイツの医療費は対GDPでみれば日本の医療費より少し多い。制度的には国営ではないが日本とよく似た医療保険制度を採用している。だがドイツでは日本のように夜遅くまで医師が働いている状況にはない。働き方の違いが大きいと答えた。

必要医師数の議論なされないまま

 また府議団から、高齢化率が上がると医師の必要性は増すはずだが公立・公的病院の一件をみてもそれが反映されていない。また、かかりつけ医について、大病院の混雑、病院医療が必要な重症者のためにも、かかりつけ医が必要との見解を聴いたことがあるが、どう考えるか、と質問があった。
 これに対し協会は、高齢化によって医師の必要性が増すことは事実である。厚労省の医師偏在指標には高齢化率は反映されているはずだが、やはり潜在的な医療需要を反映していないことが問題なのではないか。かかりつけ医については、強制的な登録制度にしなくとも、大病院志向の解消の問題は、啓発や連携によって改善が進んでいると実感していると答えた。
 府議団は、「選択の自由」は確保されるべきとコメント。その上で、国の見解では、小児科・産科の不足のみが論じられるが、終末期を受け持つ医師ももっと必要ではないかと質問した。
 協会は、緩和ケアとは在宅療養を支える医療であり、QOLを高めるには多職種協働で取り組むことが大切だと教育の場で語られている。そうした教育を受けた医師がこれから活躍し始める。そうした動きをバックアップする施策が必要だと指摘した。
 府議団からは宇多野病院の果たしている機能の重要性を訴える発言があり、地域の医療は地域で決める時代ではないか、と投げかけた。
 協会からは、むしろ今、公立・公的病院が地域医療の中枢の役割を果たすことこそ大切。若い世代の医師の4割は人口減少地域での医療に関心を持っている。そうした医師の希望を実現する公的バックアップが必要だ。地域枠を増やす権限の拡大等、自治体の判断で実施できる仕組みも必要だが、逆に中央統制が強まっていると答えた。

難病助成制度改善への協力訴える

 難病医療をめぐって府議団からは、難病医療助成は制度改正で対象疾患が拡大し喜ばしいことだったが、実態は重症度分類で支援を受けられなくなった人がいることがよくわかった。国は未診断疾患イニシアティブを使い、稀少疾患についても明らかにしていこうとしているのか、と質問があった。
 協会は創薬事業との関係でそうした動きが進んでいることを解説。あらためて、すべての難病患者が助成を受けられる制度改善に協力を求めた。

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