保険部会 植田良樹
昔は狭い範囲の口コミで良し悪しについて伝え聞くしかなかったことが、ネット社会ではその範囲が不特定多数相手に広くなり、便利にはなりました。
たとえば飲食店についてです。そこでどんなものを食べた、雰囲気調度はどうだった、店の人はどうだったという口コミに、評価点数までつけて大々的に運営するサイトもみられます。そのサイトに金を払って参加しなければ評価点数は低く操作されるという話まで出てきました。
よく使う地図アプリでも、口コミに評価点が貼り付けられるようになっています。この場合、飲食店に制限せず、客商売一般、医療機関についてまでぺたぺた同様の情報が貼り付けられるようになっています。
一般のお商売であれば何か言いがかりつけられても普通に反論等できますが、医療機関の場合、個々の事情は守秘義務にも絡む可能性もあり、イメージの問題もあって言われっぱなしが多いようです。
医療機関は法律上の規制から、「患者さんの声」などを自前のサイトに出すことはできません。その一方で、真偽の検証もできないお客様気分の口コミを業務として流布させるのは好ましいとは思えません。医療の質ではなく、「態度が気に入らない」というたぐいの、言いがかりに近いものが大半だからで、態度は大切であるにしても、どこまで本当か分かりもしないそれだけで点数つけて踏みつけるべきものではないでしょう。
先日、うちの医院について悪く書かれたサイトのプリントアウトを同封して、こういう口コミに対して法的対応をとりますよという宣伝まで舞い込んできました。私も見たこともないサイトで、当院医師(私のことか)の態度をあしざまにののしり、私の息子も院内をうろうろしているなどと書くのですが、うちにそういう息子はいません。これが通るなら、でたらめを書いては「対策とりませんか」とアプローチして、いくらでも金がむしりとれるでしょう。マッチポンプです。
さらに、どこかの製薬取次が、病院の口コミを含むナビゲーションサイトをしていると売り込んできました。登録すると診療の申し込みシステムにリンクできるとか。システムの印象は冒頭の飲食店評価サイトと変わるところなし。これを利用して医療機関について情報操作もできると言われても仕方ありません。
総じて、ちょっとでたらめすぎないでしょうか。普通にやり取りする上での口コミ情報はともかくとして、少なくともインフラである保険医療機関について、もっぱら業務として口コミ掲載や評価点数付けを行うサイトなどは、禁止するべきと私は思うのですが。