このほど厚労省は社会保障審議会医療部会に「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究」を示した。国が進める働き方改革の一環で出てきたもので、これまで応召義務は、実態として個々の医師に対し「診療の求めがあれば拒否をしてはならない」という職業倫理・規範として機能し、社会的要請や国民の期待を受け止めてきた。
こうした背景もあり、報告書では、応召義務はその存在が純粋な法的効果以上に医師個人や医療界にとって大きな意味を持ち、医師の過剰労働につながってきたとしている。地域の医療体制を確保しつつ、他方で医師法上の応召義務に関する規定の存在で医師個人に過剰な労働を強いることのないような整理を、個別ケースごとに改めて体系的に示している。
詳しくは厚労省ホームページを確認いただきたいが、医療機関、医師が患者を診療しないことが正当化される条件として、最も重要な考慮要素は緊急対応が必要か否かであり、緊急対応が必要なケースと不要なケースで診療時間内か外かに分けて述べ、医療側の専門性、設備状況、医療の代替可能性などを考慮。時間外で緊急性のないものは、即座に対応する必要はないと述べている。さらに患者の迷惑行為について、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、新たな診療を行わないことが正当化されるとする。
医療現場での過重労働が医療の安全を脅かしてきた面がある。また、命を預かる医療行為が患者と医師の信頼関係の上に初めて成立することは論を俟たず、信頼関係を構築することが医療関係者に求められる最初の仕事ともいえる。これが迷惑行為で壊されれば、安全な医療提供はできない。
これまで応召義務について明確で総合的な整理がなされたことはなく、応召義務という言葉が独り歩きしてきた感もあり、通知を確認する必要があるが、今回の内容は一定評価できる。報告書で示された医師の応召義務に対する理解が患者側にも共有され、限られた医療資源が有効に利用されることで、医療の安全にも繋がることを期待したい。
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