地域再生に根差した偏在対策が必要 医師偏在対策を考えるフォーラム開く  PDF

 協会は、「医師偏在解消」を考えるフォーラムを10月26日に開催した。会員・自治体関係者ら41人が参加し、国が医師偏在解消を旗印に進める政策が何をもたらすか、私たちの打ち出すべき対案は何かを議論した。

一貫性ない三位一体改革

 開会あいさつで鈴木卓理事長は、厚労省による再編・統合を求める全国424の公的・公立病院名の名指し・公表問題に触れ、政権全体の方針として医療費抑制を目指す提供体制改革が進められていると指摘。
 続いて、吉中丈志理事が、医師偏在是正策をめぐる現段階の情勢について報告した。三位一体改革と称される地域医療構想、医師偏在対策、医師・医療従事者の働き方改革の3施策が政策一貫性すら失い、迷走していると指摘。改正医師法・医療法による医師偏在指標・外来医師偏在指標、専門科別必要医師数(たたき台)公表を受けた新専門医制度における診療科別シーリング等の問題点を解説した。
 さらに、指標の計算に用いたデータ・途中式が公表されていないことや、医師多数区域を設定し、医師の就業・開業を制限することと少数区域で医師を増やすことが直接に結びつくものではないと批判した。医師偏在の起こる理由に切り込まず、医師の自由の制限によって偏在解消を目指す方針は間違いであり、医業の成り立たない地域において、開業・就業を希望する医師を支援するような公的な仕組みを構築するべきと訴えた。

前提崩れている推計と指標を批判

 医療経済学、社会統計が専門の研究者である佐藤英仁氏(東北福祉大学准教授)が「医師需給推計と医師偏在指標から医療供給体制を考える」と題して講演。国の医療従事者の需給推計は幾度も行われてきたが、例えば看護師の需給推計は「大外れ」し続けている。今回の医師偏在是正策の根拠データは「医療従事者の需給に関する検討会」の手によるが、それは「地域医療構想」と連動している。今回の推計は一見もっともらしいが、①計算に用いた数値のほとんどが、現状が未来永劫に続くと仮定②医師数データは医師不足にある現在の医師数を使用③入院医療における需要推計は地域医療構想における将来の必要病床数(機能別)を使用④2025年と比べ2040年の入院・外来医療需要を減少と推計⑤すでに「ハズレ」の確定した将来推計人口を使用⑥使用した医師労働時間は長時間残業を前提―といった基本的な問題点がある。
 同様に医師偏在指標についても、潜在的な医療需要が反映されていない等の問題があると指摘した。

シーリングありきの議論に疑問

 講演の後は、医師偏在指標で「医師多数区域」とされた山城南医療圏で、一人もしくは少人数で地域の医療を支える相楽医師会の伊左治友子氏(笠置町)、柳澤衛氏(和束町)が実状を報告。協会理事で福知山医師会の吉河正人氏は国に名指しされた福知山市民病院大江分院の役割の大切さを報告した。
 さらに、伊藤和史氏(京大病院総合臨床教育・研修センター特定教授)は「医道審議会専門研修部会などの最近の審議動向」を解説し、シーリングありきの国の議論に疑問を呈した。
 今回のフォーラム開催にあたっては、京都選出の厚生労働委員会所属(当時)の国会議員に出席を要請。倉林明子参院議員(共産)が出席してスピーチを行った。また、出席は叶わなかったが木村弥生衆院議員(自民)、山井和則衆院議員(無所属)、川合孝典参院議員(国民)からメッセージをいただき、紹介した。
 なお、次の地区医師会から後援いただいた。この場を借りて御礼申し上げる。
 (一社)京都北医師会/上京東部医師会/(一社)京都市西陣医師会/中京西部医師会/下京東部医師会/(一社)下京西部医師会/(一社)右京医師会/(一社)西京医師会/(一社)伏見医師会/(一社)乙訓医師会/(一社)宇治久世医師会/綴喜医師会/(一社)相楽医師会/亀岡市医師会/船井医師会/綾部医師会/(一社)福知山医師会/(一社)舞鶴医師会/(一社)与謝医師会/北丹医師会
 本フォーラムの詳報は近日発行の「メディペーパー・医療政策関連情報」に掲載予定である。

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