地域実態無視の偏在対策に疑問 各地区医師会長と意見交換  PDF

 協会は9月21日、京都府内の各地区医師会長との懇談会を協会会議室で開催。地区医師会から18人、協会から8人が出席した。

 冒頭に鈴木理事長から「理事長に就任するにあたり、各地区医師会を訪問させていただいた。その際の、各会長の話に感銘を受けた。各地区の診療形態や地域性はそれぞれだが、共通しているのは、地域で一体となって、地域住民の健康を支えるために日夜奮闘しておられること。本当に素晴らしい活動をされており、この活動がもっと評価されて良いとの思いを強くしている。本日のご意見は、今後始まる各地区医師会と保険医協会の懇談会での議論に反映させていただきたい」とあいさつした。続いて各副理事長から部会の活動や最近の医療情勢等を紹介。渡邉副理事長から「医師偏在対策とかかりつけ医登録制」「京都市の介護認定給付業務の委託・センター化構想」をテーマに話題提供し、意見交換を行った。
 医師偏在対策とかかりつけ医登録制では、国が示す医師偏在指標に対して、「医師偏在指標の数字だけで全てを考えるのは乱暴ではないか。偏在の原因を考えずに、数字だけで辻褄を合わせるやり方は解せない」「山城南が医師多数区域になっているが全く逆だ。この医師偏在指数はものすごく恣意的に感じ、現場感覚とは乖離している。同じ地区内でも高齢化率が京都府で1位の町(笠置町)と最も低い町(精華町)があり、両極端な町が混在している。医師偏在も大きな括りではなく、それぞれの地域の特性を考えた上で対策を考えるべきではないか」など、疑問視する意見が多数出された。その他にも多くの地区では人口が減少し、医師・患者も高齢化する中で、将来どうやって地域医療を守っていくのかといった課題が浮き彫りとなった。
 また、各地区医師会は医師偏在対策の一つである開業規制に懸念を示す一方で、地域医療と距離を置く開業の増加に危機感を募らせた。特に、デベロッパーやコンサルタントを介しての新規開業が増加傾向にあるとし、「(そのような開業は)全てが決まってから開業直前に地区医師会に連絡がある。地区会員の近隣に同じ標榜科目の開業があり、今後の対応も含めて地区医師会で検討している。協会のアンケートで3割近い会員が開業規制に肯定的な回答をしているのも、自由開業制の中でこういった問題もあるからではないか」など、対応に苦慮している地区医師会が多数あった。また、新規開業で地区医師会に入会しない医師も増えており、学校医の後任がいないなど地区医師会活動に影響が出ていることが報告された。
 京都市の介護認定給付業務の委託・センター化構想では、地区から「民間委託されるのは医師による審査の部分なのか」と質問が出され、協会から「介護認定審査会の資料作成等が民間委託される。今まで嘱託員が資料を整理し、必要な情報等を記載していたが、これまでの事務機能が担保できるのか危惧している」と述べた。

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