汎用技術の評価新設を 診療報酬引上げ求め厚労省と懇談  PDF

 協会は厚生労働省保険局医療課と9月17日、参議院議員会館にて懇談し、加藤厚生労働大臣宛「2020年度診療報酬改定に対する要請書」124筆と「入院料の引上げと入院時食事療養費の引上げを求める緊急要請書」を提出した。提出にあたり、協会から鈴木理事長と事務局が赴き、懇談して改善を訴えた。厚生労働省は保険局医療課・佐々木主査、堀係員が対応した。懇談にあたっては、日本共産党参議院議員(参院厚生労働委員会委員)の倉林明子議員に調整をお願いした。

汎用技術だからこそ新設・引上げを求める

 20年度改定に対する要請項目は「ネットでプラスにすること」等12項目。
 これに対して厚労省は「改定率は予算編成過程で政府として検討している。必要かつ適切な医療が提供されるようにしていきたい。個別技術の評価は改定率の中での分配となるため、一律の大幅引上げは難しい。特定疾患療養管理料の対象疾患の拡大は各学会から要望が出されており、医療技術の評価として検討することとなる。訪問診療料(Ⅰ)の『2』は検証調査を行っており、分析して議論していきたい。医科の調剤技術料について医科診療報酬は別に初・再診料、医学管理等の費用が評価されており、合わせて医療機関の収益を保っているので、薬局の調剤報酬の評価とはズレてしまう。7種類以上の内服薬投与の逓減について、最近は検討会等でポリファーマシーの有害事象について議論になることが多く、要望に応えるのは難しい。注射の処方料はよく要望いただいているが、広く影響するので、慎重な検討を要する」と回答した。
 これを受け協会は「多剤投薬については、退院患者の紹介時に糖尿病で数剤、高血圧で数剤の処方が指示された場合等、専門医の指示を変更しにくい面がある。少なくとも納入価を下回る価格でしか請求できないことはおかしい。地域包括診療加算を算定している場合は7種類以上逓減から除外される。かかりつけの医師の評価を広げて除外対象を広げられないか。注射の処方技術評価は現行評価されていないことは明確なので、小さな点数であったとしても新設してほしい」と重ねて要請した。
 また在医総管等の単一建物複数患者に関する報酬の逓減について、協会は「会員の中に、同じ医学管理を行っているのに、単一建物で診ている患者数で点数が異なるのは納得できないという意見が強い」と報告。これに対して厚労省は「現在の算定方法を導入する以前に、不適切な多数・頻回訪問等の不適切事例があったため」と回答したが、協会は「それは行政指導で改善すべきことである」と指摘して、同一の医学管理の評価を求めた。

入院料の引上げなくして地域医療は支えられない

 入院料・食事療養費の引上げについては、会員160病院へのアンケート調査(次号以降、詳報予定)に基づき、①「働き方改革」が叫ばれる中、残業代相当費用の人件費を勘案し、入院料本体を1日当たり130点以上引き上げること②人件費、業務委託費が上昇している現状を勘案し、入院時食事療養費を引き上げること③嚥下食、食物アレルギー食等、特別食加算の対象となる食種を充実すること―の3点を要請した。
 厚労省は「中医協で診療側は入院料の引上げを求めているが、支払側は患者負担をどう考えるのかと言っている。一方で『働き方改革』の枷となる基準、つまり人員配置、書類、会議等について必要な合理化はしていく。診療報酬で『働き方改革』に資する取組を後押しできるのか考えていきたい。点数をどうしていくかは2ラウンド以降に各側の意見を聞いて考えていく。入院料の一律の引上げは議論がある」と回答した。これに対し協会は「『働き方改革』で医師の当直条件等を改善しようとするとどこからも人件費が出ない。入院料を引き上げ、医師が充実する体制を整える必要がある。救急が受け入れられない等、地域医療が守れないとして、自治体病院団体からも強く要望が出されている」と指摘した。
 食事療養費では、厚労省は「病院団体含め複数から意見・要望が出されているが、慎重な議論が必要だ。消費税増税に向けて委託費引上げの打診が90%近くの業者からあったというアンケート結果については、同じ内容で幾つかの団体から報告されており、意見があることは承知している」と回答した。
 これに対して協会は、「委託費が引き上げられない場合、業務委託から撤退するという業者も出てきている。地域医療を支える病院の運営に影響が出かねず、改善を検討してほしい」と再度要請した。

中医協会長、全委員にも送付

 要請書の写しは同日、厚生日比谷クラブ加盟各社にも配布。また、10月3日には内閣総理大臣、財務大臣、厚生労働副大臣、厚生労働大臣政務官、衆参厚生労働委員会委員、京都選出衆参国会議員、中医協会長、中医協委員に送付して改善を要請した。

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