協会の医療安全活動で診療の安全・安心向上を
2018年度(18年6月~19年5月)も会員各位からさまざまな医療事故に関する報告・相談をお寄せいただいた。
昨年度の主な特徴として、①医療事故報告件数は前年度より減少し36件に留まった②17年度には37年振りに診療所の件数が病院を上回る結果となったが、18年度は減少に転じ、事故報告数の病診比率は、ほぼ同数となった③複数回の医事紛争を報告する医療機関についても、前年度と同数であった④解決率については、全事故報告のうち97・7%(過去最高)が解決に達しており、依然として高水準を保っている―などが挙げられる。
さらに17年度は、「注射」にまつわる医療事故報告件数が突出していたが、昨年度は報告件数としては減少した。しかし、患者と具体的なトラブルまでには発展しないものの、協会に寄せられる注射(採血)のトラブルに関する相談は相変わらず多く、会員各位が患者対応に苦慮している様子が窺えた。協会では、このような状況に危機感を抱き、昨年度には専門医と弁護士を講師に迎え、「ひと刺しで神経損傷? 本当に正中神経損傷ですか? CRPSですか?」をテーマに医療安全講習会を開催し、採血にまつわるトラブル発生時の対応方法などについて学習の場を設けた。
今年度も、注射時のトラブルと同様に会員各位が日々の医療安全(紛争対応・紛争予防)に取り組む上で、参考となるような講習会等を企画していきたいと考えている。
さらに、今年度は協会が医療安全に取り組んで60年目を迎える節目の年である。5年前には55周年を記念し『医事紛争事例集―医師が選んだ55事例』を発行したが、今回も60周年を記念し、新たに会員各位に役立つと思われる60事例を厳選し『医事紛争事例集―医師が選んだ60事例』と、またその事例を映像化した「医療安全研修DVD-partⅢ」の発行を予定している。会員各位には、是非とも活用していただき、日常診療における「安全」と「安心」を一層高めていただきたい。
協会は半世紀以上も医療安全に取り組んできた全国的にも稀にみる医療団体である。先に述べたように実績も確かなものがあると自負している。医療事故など患者とトラブルが生じた際には、是非協会にご相談いただきたい。