協会理事会は、「『かかりつけ医』の登録制は断じて容認できない」とする声明を7月9日の第5回定例理事会で採択した。これは、6月25日の日本経済新聞に「かかりつけ医」の登録制を厚生労働省が検討しているとの報道がされたことを受けてのもの。
同紙によると国は、医療費抑制のために、患者が任意でかかりつけ医を登録し、診療料を月単位の定額にして過剰な医療の提供を抑えたり、かかりつけ医以外を受診する場合は負担を上乗せして大病院や複数医療機関の受診を減らす案を検討するとしている。これに対し協会は、この「かかりつけ医」の登録制は、医療費総額抑制と同時に人頭登録払いを実現し、患者数に見合った医師数(開業医数)を割り出して管理するための仕組みづくりであり、断じて容認できない、とした。
根本厚生労働大臣は同日、「事実ではない」と会見で否定したが、同省がその導入を何度も目論んではね返されてきた歴史的経緯を見れば、底流にあり続けている構想であることは明らかである。さらに首相直轄である経済財政諮問会議の「新経済・財政再生計画工程表2018」には、かかりつけ医の普及とセットで「外来受診時等の定額負担の導入を検討」を「骨太2020」に方針化することを記載。20年度や22年度の診療報酬改定などを視野に入れており、同省の意向にかかわらず政府全体として推進することになっている。
これは、患者側からすれば、フリーアクセスの否定だ。イギリスのNHSのように、直接専門科の診療を受けることは原則不可として、あらかじめ登録した家庭医による診療が必要とする仕組みを、果たして日本において国民が受け入れるのであろうか。
財務省は国民皆保険とそれを支えてきたフリーアクセス、自由開業制、出来高払いこそが医療費増大を招く構造だと主張して改革を求めてきている。しかし、これらが効率的に機能してきたからこそ、世界に冠たる国民皆保険制度が築かれてきたのではなかったか。
「登録制」はそれを突き崩す一歩となる。その方向に軌道を敷いてしまわないよう、医療界全体としての妥協を許さない取組みが問われている。
協会理事会の声明は、このような国の政策に対峙し、患者・国民と結んで国民皆保険制度を守っていく決意を示したものである。
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