従軍看護師だった祖母の遺言
中川 裕美子(左京)
私の亡き祖母は日赤の従軍看護師でした。20歳のときにまだ乳飲み子だった息子(私の父)を残して兵士と同じように赤紙で召集されました。同時に祖父も兵士として召集されたと聞きました。祖母は中国の青島の陸軍病院での経験を繰り返し語ってくれました。
「足のない兵隊さん、砲弾におびえて木のベッドを壊す兵隊さん。みんなお母さんと叫んでいた」。「診療が終わると夜は医師について解剖の手伝い。遺体の中には中国人の子どもも…」「偶然、負傷した夫が運ばれてきた。しかし夫の看護には行かせてもらえなかった」。祖母は精神的にも肉体的にも強い人でした。自分が祖母の状況で耐えられたかどうか…。「どんなことがあっても戦争だけはあかん。戦争はひとのこころを変えてしまう」。
私は祖母の影響もあり医師となりましたが、「平和はすべての土台である」を信念に働き続けています。
しかし、信じられないことが私の20歳代の子どもに降りかかってきました。2019年の4月、統一地方選挙が終わって数日後、「自衛隊員募集」の封書が送られてきたのです。「自衛隊 京都地方協力本部および京都市からのお知らせ」とありました。自衛隊は京都市からの資料の提供を受けている、住民基本台帳の閲覧・転記していると明示されていました。「一般幹部候補生等採用試験のご案内」大卒程度試験合格者の待遇は月額22万5100円と。その他陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊のさまざまな職種案内が入っており、普通科、機甲科、野戦特科、掃海機雷 射撃…と武器や戦車、潜水艦などを扱う科の紹介がずらり。これは徴兵(経済的徴兵)ではないのかと怒りを覚えました。就職に苦労する若者が志願したらとぞっとします。
住民台帳を使ってこのような郵送物を京都市の青年たちに送ってくる京都市や、国のやり方に対し許せない気持ちでいっぱいです。
私は医療人としても、子をもつ母としても「戦争だけはあかん」の祖母の遺言を貫きたいと思っています。それには「憲法9条を守り、武器ではない、対話による平和外交をすすめる」ことの大切さを伝え広めたいと思っています。
※6月1日開催の憲法学習講演会で発言した内容をまとめました。