医療安全担当者交流会 患者への説明はわかりやすく コミュニケーションの重要さ訴える  PDF

 協会は5月30日、「行政・病院での患者相談あれこれ」をテーマに医療安全担当者交流会を開催。講師に京都府健康福祉部医療課医療・看護担当副主査の諌山富恵氏、京都市保健福祉局医療衛生推進室医務衛生課担当係長の吉岡葉子氏、亀岡市立病院管理部医事課医事課長の小笹和也氏を迎えた。出席者は32人となった。

府・医療安全支援センター
中立的立場で対応

 まず、諌山氏が京都府の医療安全支援センターの概要等について説明。2017年度は1514件(相談が1138件、苦情は376件)の相談が寄せられたとした。相談内容は「医療行為・医療内容」「医療知識を問うもの」が多かったとし、「相談者に同調せずに中立的立場で患者の話を聞く」など対応時の心得を紹介した。
 行政としては、何とか訴訟に発展させないようにとの思いで医療機関に連絡をさせてもらうが、できれば医療機関でどのように対応したのかを一報いただければありがたいと述べた。

京都市・医療安全支援センター
患者の意識変化を解説

 続いて、吉岡氏が京都市の医療安全支援センターの概要等について説明。2018年度は805件(相談351件、苦情454件)の相談が寄せられ、京都府とは対照的に苦情が相談の件数を上回る結果となった。苦情内容は、「接遇・コミュニケーション」が一番多く、続いて「医療行為・医療内容」、「医療費」と続いた。これらの項目は16年度までは「相談」内容の上位を占めていたが、18年度では「苦情」内容の上位3項目へと変容した。おそらく16年当時は、患者が「こういうものでいいのか」という思いで相談していたものが、時代の流れとともに「こうあるべきだ」という思いに変化したことが原因ではないかと分析した。
 また、相談者が希望すれば、医療機関に情報提供ということで連絡することがある。しかし、その際は患者の言い分をそのまま伝えているだけであり、決して事実だと認定したわけではないことを強調。その上で、適切な対応をお願いしたいと締めくくった。

患者の思い「不安」「不満」「不信」の分類を

 最後に、小笹氏が患者対応の窓口としての苦悩や患者対応の工夫について説明。まず、過去の経験から「患者とこじれる」と感じるケースとして、過失の有無がはっきりしない状況で、医療機関が先に患者に謝罪することをあげた。その後の調査で病院に過失がなかったとしても、患者にとって「病院が謝罪をした」という事実は重く、それを覆さない限り、患者との話し合いは前に進まない。病院としては、謝罪はあくまでも道義的なものであり、ミスを認めた謝罪ではないと説明し、謝罪の意味を理解してもらうことがポイントであると説明。
 次に、医師の説明が的を射ずトラブルに発展するケースを紹介。患者の知りたいことは、①なぜ治療の結果が思っていたものと違うのか②なぜ聞いていた手法と違うのか③なぜ治療期間が長くなったのか④なぜ新たな痛みが生じたのか⑤なぜこんなにも治療費が高くなったのか―の5項目に集約される。医師が医学的なメカニズム等を説明することも大切だが、患者が知りたいことへの回答になっていない場合がある。
 医師と患者でうまくコミュニケーションが取れていない時は、職員が医師と患者との間に入り、患者に代わって医師の説明した内容を確かめる等の取組みも未然にトラブルを防ぐ手段の一つであると紹介した。さらに、患者からのクレームをすべて「不平」と一括りにせずに、「不安」「不満」「不信」の三つに分類し、それぞれの段階で患者の思いを敏感に感じ取り、適切に対応することが重要だと説明した。
 最後に、クレーム対応という辛い業務を遂行できる職員は医療機関にとって貴重な人材(人財)だ。組織がしっかりと担当者をバックアップしてほしいと締めくくった。

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